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 今年で10回目となるAKB48世界選抜総選挙が16日、ナゴヤドームで開票される。前田敦子さん、大島優子さんなど、かつてセンター(1位)をめぐって注目を集めたメンバーの多くは卒業し、3連覇を達成した指原莉乃さん(さっしー)は、今回不出馬。ビッグネームが去っていまいち盛り上がりに欠けるように見えるが、気になるのは昨年24万6千票と過去最多だった「指原票」の行方だ。指原さんの最強の集票組織「指原会(さしはらかい)」のオタたちは、現状をどう見ているのか。得票を支えたお金はどこへ――。総選挙直前の握手会に潜入した。

疑問その1:指原会は動くのか?

 晴天の6月某日。握手会の会場であるパシフィコ横浜のホールに入ると、黄色いシャツの集団は、やはりラウンジスペースの中で最も目立つ最前列にいた。指原会の会員たちだ。

 「正直、これで(お金の工面から)楽になれるという気持ちが80%。寂しさが20%です」

 そう話すのは、古参会員のマックさん(44)。第1回の総選挙から投票してきた。これまでは絶対にさっしーを1位にするという義務感と使命感、同時に絶対に負けられないという気負いがあったという。

 福井在住のマックさんはこの日、握手券を持っていないのに、名古屋で他の仲間を乗せ、横浜に車で駆けつけた。指原会の会員はSNS上のコミュニティーで4396人。指原さんの地元大分には大分応援支部があるなど、全国に仲間がいるという。会員は毎週のようにある全国各地の握手会やコンサートなどのイベントに顔を出す。集まって飲み会をするのが恒例行事で、「いつも10~20人くらいはいる。表で活動しているのは50人くらいかな」という。

 マックさんはほぼ毎週、顔を出す常連会員だ。「たいした額じゃない」と謙遜するが、この10年間で「レクサスが買えるくらい」の資金はつぎ込んだという。「総選挙の日はもう心臓バクバク。追われるプレッシャーがあって、無事終わると高揚感と達成感があった。さっしーが出ない今年は、それが味わえないと思うと寂しいですね」

 だが、投票に参加しないわけではない。マックさんは昨年の半分以下の資金を投じて投票権を複数購入。2推し(お気に入り2番目)、3推し(同3番目)などに分散して投票するという。「総選挙は祭り。祭りには参加するけど、今年は担ぎ手というより観客。ゆっくり見ます」

 他陣営からは「今年は立候補しないんですよね」と、やんわり支援をお願いされることはある。だが、指原会としての投票方針はないため、指原票がまとまって他陣営に流れるということはないだろうという。

疑問その2:一体いくらのお金が?

 指原さんは去年、過去最多得票である24万6376票を獲得した。投票にはCDを購入して投票用紙を得る方法(1646円)や、ファンクラブの会員になる方法(300~400円程度)などがある。指原会の独自分析によると、平均して1票1千円程度。つまり、指原さんには昨年、2億4千万円超のお金が投入されたことになる。

 ちなみに2位の渡辺麻友さん(卒業)は14万9132票。推定1億5千万円。この2人が抜けた約40万票(約4億円)は、いったいどこに向かうのだろうか。

 昨年「家を売って資金を捻出した」というちゃいさん(56)は、「今年の投票総数は去年ほど多くないだろう」と推測する。「去年は、さっしーの有終の美を飾るために、保険を解約したり、家電を売ったりする猛者がけっこういた。今年はそこまで気合が入った話は他からも聞かない。総数としては低調なのでは」

疑問その3:家庭は大丈夫ですか?

 そんなにお金と時間をつかって、家庭は大丈夫なのだろうか。

 マックさんは独身、職業はプログラマー。指原さんに捧げた33~43歳の10年間は、一般的に婚活期でもあった。「彼女がいた時期もありましたよ。でも、結婚にはご縁がなかった」。独身主義というわけではないそうだ。では、指原さんは恋愛対象? 「ガチコイ(恋愛対象)は絶対にない。むしろ家族愛に近い」ときっぱりと否定した。

 一方、家を売ったちゃいさんはバツイチ。いろいろあって、今はこのコミュニティーが癒やしの場だという。指原会は、入会規則や会費はなく、出入りは自由。おじさんオタだけではなく、20代のアイドル好きな男女もいる。「50歳を過ぎて新しい友だちができる機会ってないじゃないですか。指原会は職場とか地域とか、そういうしがらみがない。居心地がいい」という。

 ちなみにAKBグループは恋愛禁止ですが、指原会は? 「自由です。会で知り合って結婚したメンバーもいます」とちゃいさんが話すと、隣にいたあべちゃん(36)は「やめてくださいよ~」と顔が真っ赤に。会で知り合ったまさぞうさん(49)と昨年結婚したそうだ。「家でもAKBの話題がない日は1日たりともありません」とあべちゃん。一方、一回り年下のあべちゃんと結婚したまさぞうさんは「AKBのおかげです。ありがたいことです」と幸せそうに笑った。

疑問その4:他陣営はどう見ているのか?

 指原会は否定するが、他陣営に聞いて回ると、指原票は同じHKTの矢吹奈子さんに流れるのではないかという声が多かった。矢吹さんは、指原さんの握手会に来たことがきっかけで、指原さんの勧めでHKTのオーディションを受けて合格。いわば指原さんの妹分的な存在とみられているからだ。

 その矢吹さんの選挙対策委員会(選対)を直撃すると、作戦参謀のりょうきちさん(39)は「全く迷惑な話ですよ」と困惑顔。「そういううわさは逆風です。だったら投票しないという人が出てくるので」。じゃあ話を変えて、指原会はなぜ選挙に強いのか? りょうきちさんは「だってあの人たちが一番楽しそうじゃないですか」と解説する。「言い方は悪いけど、バカでしょ。24万票って。ありえないでしょ。でもそういうバカなこと、指原会の人たちはやっちゃうんですよ。楽しそうに。楽しそうなところには人が集まる。だから強い。こっちはまだまだ」

 そうは言いつつも、矢吹陣営の机には投票用紙の束がドバッと置かれていた。ひと束50枚。ざっと30~50束はある。投票するには、この投票用紙の16桁のシリアルナンバーをネット上の投票画面に入れる必要がある。1分間に3票を投票できたら早い方だというこの地味な打ち込み作業、万単位の投票となると気が遠くなる。

 傍らでは女子大学生が、ひたすらパソコンで投票を続けていた。投票作業が面倒で、大量にCDを買って開封せずにそのまま送ってよこす支持者もいるそうで、彼女のような大学生がCDを開封して投票用紙を取り出し、ひたすら投票する。学生なのにそこまでやるのは? 「楽しいから」。「楽しい」は最強だ。

 だが取材を進めると、それだけでは済まない世界も見えてきた。(佐々木洋輔)