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 昨年11月、練習試合で0―10の大敗を喫した翌日、その「事件」は起きた。

 練習開始時間を過ぎても3年生部員3人が来ない。「二度と来ないかも」。豊田西(東愛知)の主将、大西優佑君(3年)はそう思った。

 豊田西は甲子園出場経験もある公立の強豪。新チーム発足後、昨年8月末の西三河大会で敗れ、23年ぶりに秋の県大会出場を逃した。チームの雰囲気は悪く、0―10の豊田工戦も、ミスの連続だった。「こんなにバラバラでは練習をみられない」。試合後、古和田雅章監督(45)に告げられた。特にエースの松尾修史君は何か思い詰めているように見えた。

 翌日、松尾君ら3人が部室に姿を見せたが、練習には参加しない。態度もどこかそっけない。大西君は、どうして良いか分からず「1週間後、みんなで話そう」。そう伝えるのが精いっぱいだった。

 1週間後、グラウンドに集まった部員たちを前に、大西君は語りかけた。「本音、ちゃんと言ってるか」。なぜチームがバラバラになったのかを考え、「思いをぶつけ合ってない」と感じていたからだ。

 松尾君は、抱えていた思いを打ち明けた。昨秋、腰を痛め、全力で投球できなかったこと。悪い状態の自分をチームが支えてくれないと感じていたこと。「試合中、自分1人が相手と戦っているように思えてつらかった」。他の部員もぽつぽつと語り始めた。気づくと、3時間が経っていた。

 その出来事から、部の空気は徐々に変わっていった。練習中もお互いを鼓舞するように声が出る。練習の合間に円陣を組み、意見を出し合う場もつくった。

 迎えた今年4月の西三河大会、大敗した豊田工を5―4で破り、優勝した。

 チーム崩壊の危機を乗り越え、つかんだ結束。主将の願いは一つだ。「今年は愛知から2校出られてチャンスがある。『みんな』で甲子園に行きたい」

めざしたのは「ショック療法」

 「部を休部させてください」。豊明(西愛知)の主将、猪倉諒真君(3年)は昨年11月、朝のミーティングで村山佑生監督(31)に、部全体の休部を突然切り出した。

 昨秋に発足した新チームは、現在の2年生が主体で3年生は5人だけ。猪倉君は部員の意識を高められず、部員の生活態度が乱れ、村山監督から度々、練習を止められていた。「このままでは、夏にベストの状態で臨めない」と考えていた。

 自身にも苦い思い出があった。昨夏の愛知大会前、校内で禁止されていたスマートフォンを操作していたのが見つかり、直前でメンバーから外された。後輩たちに同じ後悔を味わわせたくない。部を変えたい。休部はそんな思いを込めた「ショック療法」だった。

 2週間、朝夕の練習時間を校内外の清掃や勉強会に充てた。淡路孝紀君(2年)は「3年生の代でもっと練習したいはずなのに、部の意識改革に貴重な時間を割いてくれた。自分たちも態度を改めなければ」。休部の波は中核を担う2年生にも変化をもたらした。

 責任感が全体に浸透し、一つの方向を向き始めた部に変化が起きた。豊明の練習時間は平日約2時間。少しでも多く練習しようと、授業後はグラウンドまで全員がダッシュ。朝の練習でも意欲的にバットを振るようになった。

 今夏の目標は昨夏の4回戦を超えること。猪倉主将は「小さな意識の変化が接戦での粘り強さにつながる」。失敗が糧になると信じている。