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 明治、大正、昭和の3代にわたって活躍し、近代日本画に革新をもたらした横山大観(1868~1958)。その生誕150年、没後60年を記念した回顧展が、京都国立近代美術館(京都市左京区)で開かれている。主題も表現も多岐にわたりながら、そのどれもが見る者に強い印象を残す。いまなお「国民的画家」と称されるゆえんを感じられる展示だ。

 出展数は約90点で、大部分で展示替えがある。一度に並ぶのは50~60点とそう多くないが、屏風など大型作品も多く、じっくり見るにはちょうどいいボリュームだ。京都国立近代美術館の梶岡秀一・主任研究員は「代表作を網羅し、大観展の決定版を目指した。実験精神にあふれた、画壇の革新者。『これぞ大観』というのを感じてほしい」と話す。

100年間行方知れずだった作品も

 今展では、明治、大正、昭和の3章に分けて、大観の画業をたどる。時代に沿って見ていくことで、新たな表現に挑戦しながら独自の画風を確立していく過程や、時々の社会状況との関わりを感じることができる。

 明治時代、東京美術学校の1期生になった大観は、校長の岡倉天心の指導のもと、日本画の新しい表現を模索した。輪郭線を描かずに、濃淡やぼかしで空気や光を表現する「朦朧体(もうろうたい)」もその一つだ。

 また、それまで他の画家が描かなかったような、斬新な主題にも取り組んだ。たとえば「彗星(すいせい)」(7月1日まで展示)は、1910年のハレー彗星の接近を水墨画で描いたもの。自身が旅先で見た、ナイアガラの滝と万里の長城を金屏風に描いた作品もある。

 そしてこの章では、約100年前の画集に掲載されて以降、行方知れずになっていた新発見の作品「白衣観音(びゃくえかんのん)」も展示されている。

雄大な世界観

 大正時代には、琳派を意識した大胆で鮮やかな作品の一方で、水墨画も多く描いた。全長40メートルの画巻に、水が川となって海に注ぎ、再び雲になる様子を表現した「生々流転(せいせいるてん)」(展示期間中巻き替えあり)は、連続する風景の中に、季節の変化や一日の時間の流れも描き込まれている。

 水墨画の技法を駆使しつつ、雄大な世界観を破綻(はたん)なくまとめ上げた大観。この作品のためにトイレにまで持ち込んで構成を練ったという小下図も展示されており、作者の工夫の跡がうかがえて興味深い。

 昭和時代の大観は、富士山などの日本固有のモチーフを多く手がけた。この時代の代表作である「夜桜」と「紅葉(こうよう)」(いずれも7月1日まで展示)も、古くから日本人が親しんできた主題だ。

 迫力ある大画面に、色鮮やかに描き込まれた桜ともみじ。豪華で大ぶりな印象を受けるが、近づいて見ると、色づかいや装飾の細やかさに驚く。この2作が同じ空間に並ぶ展示室は、圧巻の美しさだ。

 一方で、細やかな情緒あふれる作品も並び、画風の幅広さを実感できる。

 7月22日まで。月曜休館(7月16日は開館し、翌17日休館)。一般1500円など。京都国立近代美術館(075・761・4111)。(松本紗知)