千を超える提灯(ちょうちん)の明かりが、福島県相馬市尾浜の公園で揺れました。

 6月10日夜、天皇、皇后両陛下の福島県訪問を歓迎する提灯奉迎の一場面です。午後7時48分、両陛下が提灯を持ちながら宿泊先のベランダに出てくると、公園に集まった約1300人から歓声が上がりました。人々が提灯を横に振ったり上に掲げたりすると、両陛下も同じように提灯を揺らしました。会場から宿泊先までは約500メートル離れ、両陛下の表情は見えません。でも、集まった人々は笑顔で約5分間、両陛下との時間を楽しんでいました。

 奉迎後、その場で主催者から天皇陛下の感想が伝えられました。「復興途上の大変な時にもかかわらず、大変多くの人に提灯で迎えて下さってありがとう。みなさんの灯がとても美しく見えました。この地も含め、福島の復興が更に進んでいくことを願っております」。すると、会場からは大きな拍手が起こりました。

 両陛下は6月9~11日、2泊3日の日程で福島県を訪問しました。毎年恒例の全国植樹祭への出席が主目的でしたが、3日間すべてに東日本大震災の慰霊や復興状況の視察が組み込まれました。在位中おそらくこれで最後。初日の9日、到着したJR郡山駅で熱烈な歓迎を受けました。「ようこそ天皇皇后両陛下」と書かれた旗を掲げる人もいました。

 この日はまず、いわき市の県復興公営住宅北好間団地を訪れました。県によると、東京電力福島第一原発事故の影響で富岡町や大熊町など5町1村から267世帯441人(5月末時点)が避難してきているといいます。

 両陛下は到着すると、待ち受けた住民に歩み寄り、一人一人に声をかけました。天皇陛下は「ずいぶん怖い思いをされたでしょう」「ご家族は無事で?」と、皇后さまは「家族は離ればなれですか?」「復興が少しでも進むよう願っています」と声をかけていました。涙を流す女性もいました。

 続いて集会所に入り、富岡、大熊、双葉、浪江の各町から避難している4人の入居者と懇談しました。浪江町の佐々木繁子さん(68)が民俗芸能の田植え踊りの再興を目指していると紹介すると、天皇陛下は「色々と人を結びつけることになるんでしょうね」と話していました。

 双葉町の渡部勝以(かつい)さん(68)は7年前にも埼玉県加須市の避難先で両陛下と会ったと伝えました。「陛下と握手をした際に手に汗をかいてしまい、皇后さまと握手する際に思わず手を引っ込めてしまいました」と謝ると、皇后さまは「別に気にしていませんよ」と笑って答えていたそうです。

 一方、渡部さんは両陛下の体を心配しました。懇談後の取材では、渡部さんは「7年前に比べると、随分とお年を取られたなと感じました。皇后さまは椅子から立つのに苦労されているようだった。ゆっくりして欲しい気持ちもある」と話しました。

 懇談の最後に、天皇陛下は4人を前に「ご苦労も多かったと思いますが、それを乗り越え、良い生活を築いていかれるよう願っています」と締めくくりました。

 夜は、宿泊先の「スパリゾートハワイアンズ」(いわき市)でダンシングチームによるフラガールの踊りを観賞しました。ハワイアンズは震災で損壊して全面休館になり、フラガールも一時は踊る場所を失いましたが、全国巡業するなどして復興の象徴的存在となりました。

 復興支援ソング「花は咲く」など3曲に合わせた踊りが披露され、両陛下は拍手を送っていました。キャプテンの鈴木晴奈さんは「震災後、何回も両陛下が福島に足を運んでくださったおかげで復興につながった。感謝の気持ちを忘れずに、これからも復興に向けてお力添えできれば」と涙ながらに話しました。

 2日目の10日午前には、いわき市から全国植樹祭会場のある南相馬市に向かう際、両陛下は常磐自動車道を北上し、帰還困難区域や原発に最も近づく5・8キロの地点を通過しました。宮内庁によると、あいにくの雨で原発は見えなかったのですが、車の速度を緩め、両陛下はじっと原発の方向を見つめていたといいます。

 車は高速道路を降りて国道6号を走行しました。道路わきには大量の除染土が積まれ、その様子も車内から見たとみられます。

 南相馬市で開かれた平成最後の全国植樹祭に出席し、両陛下は沿岸部にある海岸防災林の整備地にある式典会場で防災林の一部となるクロマツやアカマツなどの苗木を植えました。皇后さまはひざをつき、手で土をかけました。

 3日目の11日午前9時過ぎ、私たち報道陣が驚くニュースが宮内庁から発表されました。「皇后さまが早朝に38・1度の熱を出し、一部の予定については陛下だけでお務めになるかもしれない」というものでした。この日は強い雨が降り、心配する空気が漂いました。

 しかし皇后さまは、東日本大震…

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