[PR]

 三菱重工業の宮永俊一社長が朝日新聞のインタビューに応じ、トルコで手がける原発の新設計画について「日本とトルコの政府間できちんと話をして、それぞれの関係企業も入り、全員の意見が一致しないと難しい」と述べ、早期の着工に慎重な姿勢を示した。目標とする2023年の1号機の運転開始が難しいことを改めて示した形だ。

 計画では、黒海沿岸のシノップ地区に原発4基を建設する。三菱重工と仏企業が共同開発する新型原子炉を採用し、三菱重工は採算性の調査も担当する。フランスやトルコの企業などとつくる企業連合が事業主体となるが、企業連合に加わる伊藤忠商事が計画から離脱することが今春、表面化した。

 宮永氏は引き続き企業連合に加わる意向を示しつつも、「事業体が成り立つことが前提だ」と強調。企業連合の行方が不透明になっているとの見方を示し、事業主体の「中核にはならないと思う」と述べ、企業連合を主導する考えも否定。どこが主導するかは「決まっていない」とした。日立製作所が英国の電力会社を買収して進める原発の新設計画と比べ、「だいぶ手前の段階だ」との認識も示した。

 事業費は稼働後の発電による収入で回収する。約2兆円とされていた総事業費は、安全基準の強化などで2倍超にふくらむ見通しだ。採算性調査は7月にもまとまる予定だが、宮永氏は「こういう条件なら(着工)できるというだけで、それが関係者にとって満足がいくかは別の話。みんながやりたいということにならないと進まない」と指摘。調査を終えてもすぐに着工せず、調査結果をもとに事業の見直し交渉に入ることを示唆した。日本、トルコ両政府が13年に大筋合意した想定売電価格が見直しの対象になる方向だ。

 運転開始の目標を遅らせるかどうかについては「コメントできる立場ではないが、現実論として原発(の建設)がかなり期間がかかるのは事実」と述べた。

 トルコの原発計画は、日本政府が成長戦略として推進する原発輸出政策の一環と位置づけられている。13年に安倍晋三首相とトルコのエルドアン首相(現大統領)がトップ会談して本格的に動き出した。(高橋諒子、内藤尚志)

 〈シノップ原発計画〉 三菱重工業など日本企業も加わる企業連合が、トルコ北部のシノップ地区に原発4基を新設する計画。トルコの建国100周年にあたる2023年に初号機の稼働をめざす。三菱重工が採算性を調査中で、調査期限を今年3月から7月まで延長している。周辺は豊かな漁場として知られ、地元住民らによる反対運動もある。

 原発事業をめぐる宮永俊一社長との主なやりとりは次の通り。

 ――トルコの原発計画の採算性調査は3月が期限だったが、まだ終わっていない。

 「もう少し検討しないといけないことがあったということ。ぼちぼち終わらせるべきだなと思っている」

 ――事業を担う企業連合のメンバーも定まっていないのでは。

 「われわれは(企業連合に)入る予定だが、事業体が成り立つかどうか。すべて責任を負うわけではない。設備の製造では中核になるが、事業体の中核にはならないと思う。どこが(中核に)なるかはこれからの問題で、コメントできない」

 ――このペースでは、目標とする2023年からの稼働は難しいのでは。

 「コメントできる立場ではないが、現実論として原発はかなり期間がかかるというのは事実だ」

 ――事業費は想定の倍以上になる見通しだ。トルコ側と合意済みの電力料金では採算がとれないのでは。

 「(料金は)契約したものではない。採算性調査の結果によっては、(トルコ側と)相談したい。まずは両国の政府間でやる。われわれはあくまで設備の供給者なので」

 ――撤退しないのか。

 「われわれが着工できる条件を、採算性調査の中で申し上げることに全力を尽くす。それが関係者にとって満足いくかどうかは、また別の話。みんながやりたいということにならないと進まないと思う」

 ――ほかの国の原発の受注もめざすのか。

 「ビジネスとして可能性があるものは、ぜひやりたい。設備の供給はいつでもしたいが、土木や建設の工事となると、海外では慣れていない。(トルコの計画のように)建設込みになるとリスクが大きくなるので、リスクをみながら取り組む。事業として成り立たないものならギブアップするということだ」

 ――国内では原発の需要増が見込めないこともあり、国内原発メーカーの統合も取りざたされている。

 「(統合に)メリットはない。原子炉の炉型には(三菱重工が手がける)加圧水型と(日立製作所や東芝が手がける)沸騰水型とがあり、設計思想がまったく違う。いっしょにしても効率的にはならないと思う」

 ――原発で使う核燃料事業の統合は。

 「炉よりは統合が簡単で、はるかに効果がある。関係各社で合意できる条件があれば、検討するのがよいと思う」