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 「電話による世論調査って意味あるの?」。世論調査の記事を発信すると、そんな声をちらほら見かけます。2016年のアメリカ大統領選では、現地の大手メディアのほとんどが予測を間違えました。固定電話から携帯電話。さらにネットなど、新しいツールが生まれている時代。世論調査で行われていること、そして最新技術を紹介します。

統計的に無作為で選ぶ

 今のメディアの世論調査で主流になっているのは、RDD(Random Digit Dialing)と呼ばれる手法です。

 コンピューターで無作為に電話番号を作り出し、コールセンターの調査員が電話をかけて調査をお願いします。

 統計的に無作為で対象者を選び、かつ、電話帳に掲載されていない人にも電話できるため、より国民全体の縮図に近づけられるという利点があります。

「携帯電話だけ」まだ難しい

 しかし、ここで疑問が出てきます。「固定電話ってどのくらいの人が持っているの?」

 朝日新聞が2018年に調べたところ、固定電話はないが携帯電話は持っている「携帯のみ」層は16%でした。

 一方、固定電話はあるが携帯電話はない「固定電話のみ」層は9%で、米国のようにほぼすべての人が携帯を所有しているとはいえない状況でした。

 この「固定のみ」層の意見も聞くために、固定電話への調査は必要ですから、日本では携帯電話だけのRDDはまだ難しいでしょう。

新しい手法も

 電話以外にネットを使った世論調査は可能なのでしょうか。

 その手法を探るべく、2018年5月、コロラド州デンバーで開かれた米世論調査学会に参加しました。

 学会では電話によるRDDだけでなく、ネットや郵送調査、面接調査などで新しい手法の発表が数多くありました。

ネット調査の課題は?

 インターネットはどうでしょう。

 現在、企業によるマーケットリサーチでは、ネットで使えるポイント獲得のために応募してきた人を対象としたインターネット調査がよく使われます。

 ここで、思い起こされるのが1936年の大統領選を巡る「リテラリー・ダイジェスト」誌の失敗です。

 「リテラリー・ダイジェスト」誌は、全米の電話や自動車の保有者などに約1千万枚の用紙を配布。200万人以上から回答を得て予測しましたが、外れてしまいます。回答者の多くは比較的裕福な層という「偏り」があったのです。

 ネットにおいても、「リテラリー・ダイジェストの失敗」と同様の、調査対象に「偏り」が出るという問題点があります。

 この問題点に対し、米世論調査学会では、性別や年代だけでなくインターネットでの使用時間やインターネットで自分の意見を表現する頻度で、回答者の「重み」付けをして、「偏り」を減らし、調査対象の縮図に近づけるという手法が発表されていました。

 模索が続くインターネットの分野でも、調査の「半歩前進」を肌で感じる学会でした。

クリントン氏を予測した「教訓」

 ちなみに2016年大統領選は、アメリカの世論調査にとって「苦い経験」でした。

 アメリカの大手メディアのほとんどは、世論調査をもとにヒラリー・クリントン候補の勝利を予測しましたが、結果はドナルド・トランプ候補が当選しました。

 2017年の米世論調査学会では、このときの世論調査に関する報告がありました。その原因のひとつとして、高学歴の人はクリントン氏支持の傾向が強く、調査に協力する人は高学歴者が多かったので、クリントン氏有利という結果が出がちだったということでした。

 このような場合、高学歴の人の回答の「重み」を減らす補正が必要でしたが、報告書の責任者であるピュー・リサーチ・センターのコートニー・ケネディ氏は「州レベルの調査は、低コストのものが多く、こうした補正を加えていないものが多かった」と述べており、州レベルの調査をもとにした当選予測が間違ったのではないかとのことでした。

 1936年の大統領選では科学的な世論調査の「勝利」でしたが、80年後の2016年大統領選世論調査は「勝利」とはほど遠い状況だったのです。それだけに2020年の大統領選では、新しい手法で我々を驚かせてくれるのではないかと感じています。(齋藤恭之)

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