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 かつてカラオケ業界をリードしたシダックスが今月、「カラオケ館」を展開するライバルのB&Vにカラオケ事業を売却し、店舗運営から事実上撤退した。競合他社が業績を伸ばすなか、「ひとり負け」が続いていた。凋落(ちょうらく)ぶりは覆うべくもないが、業績不振の理由はカラオケ市場の変化に乗り遅れたことだけではないようだ。

 シダックスは7日、債務超過に陥っていたカラオケ運営会社2社をB&Vに売却。その際に38億円の損失が発生したため、取引銀行などがつくるファンドに優先株を発行して25億円を調達することを28日の株主総会で決める。そこまでしてもカラオケ事業を切り離す必要があった。

 カラオケ人口は1990年代のブームを経て、2000年以降は年間4千万人台後半で横ばいが続く(全国カラオケ事業者協会推計)。「ビッグエコー」を展開する第一興商など競合する大手が好業績を続ける一方、シダックスの2018年3月期のカラオケ事業の売上高は10年前の3割に落ち込んだ。グループ全体の売上高はピーク時の6割の1428億円まで減少。店舗の減損も響いて純損益は3年連続の赤字に沈む。管理職らへの昨年末の賞与の支払いが今年3月に遅れた。

 シダックスの祖業は社員食堂の受託運営だ。創業者の志太勤(しだ・つとむ)氏(83)は日本ニュービジネス協議会連合会会長や、政府の規制改革・民間開放推進会議の委員などを歴任したベンチャー界の論客として知られる。93年にカラオケ事業に参入し、グループ内で一括購入した食材を使う「レストランカラオケ」が好評を博した。親子連れも入りやすい「地域の公民館を目指す」としてパーティールームも備えた店舗を展開。09年には300店を超えたが、その直後から売り上げが落ち始めた。理由は「遠くて高い」だった。

 店舗は郊外の幹線道路沿いが中心で、飲酒運転の厳罰化が客足に響いた。部屋の使用料に加えて飲食代がかかるため、繁華街や駅前に「飲食持ち込みOK」などの格安店が次々に現れると、客が流出。過剰投資が重荷になった。通常は1店舗当たり2億円前後の出店費用が、00年代には最大で2倍近くになっていた。

 時代の変化にも乗り遅れた。「ひとりカラオケ」など少人数の利用が増えるなか、グループ利用を想定した大型店が多く、新たな需要をつかみきれなかった。

 経営の迷走はカラオケ事業にとどまらない。

 3月に臨時株主総会を開き、再建に向けてファンドから出資を仰ぐための定款変更をする予定だったが、延期の末に出資受け入れを断念し、総会は中止に。「自主再建は厳しく、同業者のもとで再建する方が望ましいと最終的に判断した」と遠山秀徳副会長は説明する。赤字続きで自己資本が減っているなか、1株当たり15円の配当を04年3月期から維持。5月下旬には、資本準備金46億円のうち40億円を取り崩して配当原資に充てる方針を発表した。株式の4割を創業家一族が持つため、「財務基盤を弱めてまで創業家が潤うのはおかしい」(元幹部)と疑問の声もあがる。

 上場企業のシダックスと創業家一族の「ビジネスの境界」があいまいだと指摘する声もある。勤氏は97年に社長の座を長男の勤一(きんいち)氏(60)に譲り、現在は取締役最高顧問に就く。15年には、勤氏が故郷の伊豆半島で個人で始めたワイナリーをシダックスが約26億円で購入し子会社化した。シダックスグループに属さない、勤一氏が社長を務める会社が所有する東京・渋谷のビルに、シダックスのレストランやエステが入居。シダックスは勤一氏側に年間約9千万円の家賃を支払っている。

 カラオケ事業を売却し、「これから会社はよくなる」と勤氏。今後は学童保育や学校給食の受託事業を強化し、「本来の姿に戻り利益の出る会社になる」と胸を張るが、元幹部はそれを残念がる。「優れた経営者だったが、商売が甘くなった。社員が気の毒だ」。シダックスが輝きを取り戻すのに必要なのは、規律かもしれない。(高橋末菜、大鹿靖明)

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 カラオケ事業の売却を受けて、…

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