[PR]

 大阪府堺市教育委員会が、学校園の敷地内で禁じている喫煙があったという情報を受け、市立学校や幼稚園の全教職員に調査票を配り、同僚の喫煙を目撃した場合、名前を挙げて回答するよう指示していたことがわかった。現場からは「『密告』ではないか」と反発が出ている。

 市教委教職員人事部によると、1日付で計149校・園の校長・園長を通じ、非常勤講師らを含む全教職員約4500人に調査票を配布。回答は校長・園長が回収し、8日夕までに市教委に持参するよう指示した。

 調査票では、2017年度以降、学校園の敷地内で喫煙(電子たばこを含む)をしたことがあるか、同僚が喫煙しているのを見たことがあるかを尋ね、見たことがある場合は時期と学校園名、喫煙していた教職員名を書くよう求めている。

 同部は回答を「任意ではなく必須」とし、長期休暇中などの教職員についても校長らが聞き取るよう指示。既に4千人以上の回答が市教委に届いたという。

 堺市教委は04年度から、学校園の敷地内を完全禁煙としてきた。敷地内や勤務中の喫煙は市の服務規律違反となるが、過去に処分された教職員はいないという。

 調査の理由について、教職員人事部は朝日新聞の取材に対し、「敷地内で喫煙があったという信憑(しんぴょう)性の高い情報があり、こうした調査が必要だと判断した」と説明している。

 児童らの受動喫煙を防ぐため、回答で喫煙を自ら認めた人や、名前が挙げられた人に対して市教委が直接聞き取りをし、処分も含めて「必要な対応をとる」という。回答を拒んだ教職員には、拒否した事情を聴く意向だ。

 今回の調査について、堺市内の教職員らが加入する大阪教育合同労働組合は今月上旬、市教委への申し入れで「自白を強要し、同僚の密告を奨励するような調査だ」と抗議し、調査の中止を求めた。同組合堺支部の幹部は「教育現場の同僚同士が疑心暗鬼に陥る可能性もある。こうした調査が繰り返されれば、大きな問題だ」と話している。(加戸靖史)

教職員同士の疑心暗鬼招く

 《小野田正利・大阪大大学院教授(教育制度学)の話》 教職員の喫煙について情報が寄せられたなら、その学校を絞り込んで調べればよく、教職員全員への調査は明らかに異様で行き過ぎだ。調査の目的と手段を取り違えているというしかない。他人のあいまいな記憶に基づいて喫煙の疑いをかけられたら、著しい人権侵害になる。互いに信頼し、協調して働かなければならない学校現場で「チクリ」をさせることは、教職員同士の疑心暗鬼を招き、弊害の方がはるかに大きい。