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 子どもの笑顔をテーマとする写真家が、4カ国でダウン症児を撮影して5月、ロンドンで写真展を開いた。次の目標は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせた国内での開催。「この子たちの、前向きなエネルギーを伝えたい」と願う。

 大阪府池田市の名畑(なばた)文巨(ふみお)さんは、30年以上子どもを撮り続けてきた。写真館などに勤めた後、独立。「笑顔が見る人に希望を与える」と主に就学前の子どもを写し、多くの作品が企業カレンダーなどに採用されている。

 「身近に障害がある人はおらず、今思えば『可哀想』と偏見も持っていた」。5年前、撮影で英国に滞在し、障害者福祉に携わる男性と偶然知り合った。彼は言った。

 「公園で子どもたちが一緒に遊んでいたら、障害があってもなくてもわからないよ」。胸にすとんと落ちた言葉をきっかけに関心を持った。翌年、知人のつてで、ダウン症などの子どもたちを国内で撮影する機会に恵まれた。

 そして、驚いた。普段の撮影のように、おもちゃなどを使って子どもを生き生きとさせる必要がなかった。「最初から心を開いてくれて、エネルギー全開。この子たちは可哀想な存在なんかじゃない」

4カ国で撮影、ロンドンで作品展

 その姿を多くの人に知ってほしいと、先天性で知的な遅れを伴うことも多いダウン症をテーマに写真展を企画した。知人らと相談し、日本に比べて障害者への理解が進んでいると感じた英国を舞台に選んだ。クラウドファンディングで費用を賄い、歴史的に英国と関係の深い南アフリカとミャンマーでも撮影した。

 4カ国で十数組のダウン症児がいる家族に会った。「どの家族もダウン症の子どもを中心にまとまり、子どもが親に力を与えているようにさえ感じた」と振り返る。

 5月にロンドンのギャラリーで開いた写真展は、英国の写真家2人との共同開催。2人はそれぞれ、ダウン症と診断された子の出産を選んだ妊婦、成人して働くダウン症の人、をテーマに出品した。

 6日間で800人が訪れた。おなかの子がダウン症である可能性が20%と告げられ、血液検査の結果を待っているという妊婦も来た。「結果がどうあれ、産む気持ちではいた。展覧会との偶然の出会いが、私の考えが間違っていなかったというサインに感じられた」と話したという。

 笑顔の写真に、「良い面ばかりをとらえている」という声もある。名畑さんは、その指摘を認めたうえで、言う。

 「偏見を取り除くには、プラス面を強調する必要がある。かつて障害者に偏見があった僕の写真が、立ち止まり、考え、意識を変えるきっかけになってほしい」(松尾由紀)

母「壁、低くなれば」 最初のモデル・生駒はるなさん

 名畑さんが最初に撮影したダウン症の子どもは、京都府長岡京市の生駒はるなさん(11)だった。知的障害、聴力障害があり、手話などでコミュニケーションをとる。

 初めての撮影は入学直前だった。「当時のはるなは男の人が苦手で心配でした。でも初めから笑顔で、さすがプロ。親ばかだけど、仕上がった写真が可愛らしくて」と母の裕子さんは振り返る。

 5月には、はるなさんもモデルになった写真展を見るため、親子3人で渡英した。開催が決まると、やはりダウン症の子どもがいる裕子さんの友人が、「こんな機会はないよ」と後押ししてくれた。

 「はるなを産んだあと、必死すぎてよく覚えていない時期もある。でも今は、そんなに暗いものではないし、海外にだって行けた。この子の写真を通じて、障害がある人への壁が少しでも低くなってくれたらうれしい」と裕子さんはいう。

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