拡大する写真・図版高知・窪川の牧野圭翔君。1年生の夏から2年間、部員1人で練習を続ける=2018年5月15日、高知県四万十町、細川卓撮影

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 この夏、100回を迎える全国高校野球選手権大会。近年、少子化や小中学生の野球離れなどで、部員数が9人に満たない野球部が増えている。今年4、5月の日本高校野球連盟と朝日新聞社の調査では、部員数が10人未満の学校は7・8%と10年前の約3倍に。連盟加盟校数も昨年時点で、12年連続で減少している。

 少人数の野球部の多くは、複数校でつくる「連合チーム」として夏に挑むが、熾烈(しれつ)なレギュラー争いもなければ、満足なチーム練習もできない。それでも、野球に打ち込む球児たち。それぞれに置かれた環境で、奮闘する姿を追った。

 近くに清流・四万十川が流れる高知県立窪川高校。山あいの両翼90メートルの広いグラウンドに、甲高い打球音が響く。牧野圭翔(けいと)君は、1年の夏に3年生2人が引退してから、たった1人で練習を続けている。顧問の先生が来られない日は、キャッチボールすらできないこともある。

 「一度始めたことは最後までやるのが一番」と言い聞かせ、孤独に耐え続けた。そんな牧野君の頑張りを見て、クラスメートが練習を手伝ってくれるようにもなった。

 今夏は同じ県立高校の清水、幡多農と3校連合で挑む。「一人きりのつらさが耐えられなくて、やめたいと何度も思った。でも、最後は野球を続けて良かったと言えるようにしたい」

拡大する写真・図版吉野(奈良)の(左から)城野海人君、加藤紘人君、大谷洋人君。高校近くの駅に住み着いた猫と帰りの電車を待つ=2018年6月12日、奈良県吉野町、細川卓撮影

 奈良県立吉野高校は、部員が2年生の3人しかいない。リーダーシップがある大谷洋人君、お調子者の城野海人君、いじられキャラの加藤紘人君は同じ土木工学科で、登下校も一緒だ。

 中学で不登校になり、一度は野球をやめた城野君。「先生に怒られても、エラーをしても、声をかけてくれる仲間がいる。1人で続けるのは無理だった」とふり返る。

拡大する写真・図版大阪・平野の中沢元気君(中央)。連合チームを組む松原、西成とチームメートの自宅前で羽根打ちの練習をする=2018年6月4日、大阪府松原市、細川卓撮影

 全国屈指の激戦区、大阪府にも少人数の野球部がある。府立平野高校の中沢元気(もとき)君は、昨年秋にバドミントン部から硬式野球部に移った。府立松原高校、府立西成高校、府立勝山高校と組む連合チームの中で、唯一の3年生だ。一緒に頑張る仲間ができたことで、「足を引っ張りたくないから、しんどいときに逃げなくなった」と責任感が芽生えた。

 他校のチームメートとは土日しか会えない分、一緒にラーメンを食べたり、遊びに行ったりして仲良くなった。「色んな高校と交流できて輪が広がった。みんなの力の引き出し方も分かってきました」と胸を張る。

拡大する写真・図版富山・泊の笹原仁希君(手前)。監督と2人の練習を終え、マネジャーとネットを運ぶ=2018年5月29日、富山県朝日町、細川卓撮影

 富山県立泊高校の笹原仁希(じんき)君もたった一人の野球部員だ。監督と2人のマネジャーとともに、最後の夏に向け練習に励む。「ヒットを打ったら、親や友人が喜んでくれる。そのうれしさが忘れられなくて、ここまでやってこれた」

 7月11日から始まる富山大会には、連合チームで参加する。「1人を言い訳にしたくない。支えてくれた人たちに良かったと思われるようなプレーを見せたい」と意気込んでいる。(細川卓)