[PR]

 旧優生保護法(1948~96年)によって不妊手術を強制された障害者らが、国に損害賠償を求め、相次いで提訴した。訴訟で国は争う姿勢を示しているが、超党派の議員連盟や与党のワーキングチームは、来年の通常国会で議員立法による救済法案の提出をめざしている。ようやく明らかになりつつある実態に、どう向き合うべきか。

 「当時は合法」との立場に終始していた国は今年3月、ようやく調査を決めた。だが、すでに記録の多くが破棄されている。原告のなかにも、記録がなく、手術の証拠を示すため、医師の協力で手術痕の診断書を得て訴訟を起こした人もいる。朝日新聞の調査では、強制不妊手術の被害者のうち個人の特定できる資料が残っているのは約3割だ。

 記録がない人たちをどう救済するか。被害者の掘り起こしは容易ではない。屈辱的な経験を打ち明ける苦痛ははかりしれない。障害が重い人もいる。被害者は、最も声を上げにくい人たちだ。原告側弁護士は「だからこそ補償制度が必要だ。記録がないことを本人の不利益にしてはならない」と話す。

 被害者のなかには、事実上拒めない状況で「同意」して手術された人もいる。国はこうした実態も幅広く調査し、救済の道を探るべきではないか。声を上げた被害者の多くが、「同じようなことを二度と繰り返さないでほしい」と話す。一昨年7月に相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件の被告が優生思想を抱いていたように、差別や偏見はいまも社会に潜む。

 「障害者は子どもを産まないものといった思い込みはいまも人々に刷り込まれている」と話すのは、DPI女性障害者ネットワーク代表で視覚障害のある藤原久美子さん(54)。妊娠した際、治療の影響で障害のある子が生まれるかもしれない、育てられるのか、と医師らに中絶を勧められた。藤原さんは、強制不妊手術の被害者に国が謝罪することは、産むか産まないかを選ぶ自由を奪うのは誤りだ、と人々に広く知らせる意義がある、と考える。「過去の問題でも、障害者だけの問題でもない」と話す。

 私自身、2015年に70代女性が日弁連に人権救済を申し立てたことを取材するまで、この問題を知らなかった。朝日新聞もまた、強制不妊手術の問題を十分に報じてきたとは言えない。

 差別に気づき、おかしいと言えるか。産むことも産まないことも、その人自身が決められる世の中か。いまの、自分の問題として向き合っていきたい。(田中陽子)

■最初の相談から20年、苦しい…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら