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 マッサージの資格を持たず、「もみほぐし」や「リラクセーション」などの看板を掲げた業者による消費者トラブルの相談が群馬県内で増加している。低価格が売りの業者が増える一方、有資格者の撤退が背景にあるとみられる。業界団体は対策強化に乗り出す考えだ。

 県内の50代女性は昨年7月、もみほぐしの店を利用した。背中の痛みがひかなかったため、翌日に医師に診てもらったところ、肋骨(ろっこつ)にひびが入っていると診断された。治療が必要となったため、近くの消費生活センターに「損害賠償を求めたい」と相談した。

 県消費生活センターによると、法的資格が必要な「あん摩マッサージ指圧」などを除く、法的資格が必要ない施術によるトラブルで、県内のセンターに寄せられた相談の件数がこの3年間で急増している。

 金銭トラブルなども含めた相談は2015年に3件だったが、16年は6件、17年は18件に。昨年は「腰の痛みがより強くなった」「背中に痛みが出た」「手にしびれが出た」などの健康被害の訴えがあった。

 「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」は、医師以外がマッサージを仕事として施術するには国家資格が必要と定めている。治療目的で体をもむ行為などは「医業類似行為」にあたり、3年以上の教育を受けて資格を得なければならない。

 だが、行為の定義は条文に明記されておらず、資格の有無による施術の範囲に明確な基準はないという。判例では、無資格者で健康に害を及ぼす恐れのある場合は処罰の対象となる。

 ただ、害が及ばない範囲内でなら、同様の施術をしても医業類似行為には当たらないとされる。そのため、無資格者は「手もみ」「足つぼ」「整体」「カイロプラクティック」などの看板を掲げて開業しているケースが多い。

有資格者「仕事が激減」

 無資格者の開業が相次ぎ、有資格者たちからは「仕事がなくなる」との悲鳴も上がっている。

 マッサージ業を営む群馬県渋川市伊香保町伊香保の仲井清江さん(69)はかつて主に地元の宿泊施設に出張し、宿泊客を相手に施術していた。だが、近年は仕事が激減。マッサージだけで生計を立てるのが難しくなったという。「多くの宿泊施設に無資格者が出入りし、私たちプロからみれば人体に危害が及ぶような行為も横行していると聞いている」

 そんな動きを受け、群馬県は昨年10月、無資格者によるマッサージの防止などを呼びかける注意喚起の文書を県内の旅館とホテル、県旅館ホテル生活衛生同業組合に送った。

 無資格者との競争激化の影響もあり、公益社団法人「群馬県鍼灸(しんきゅう)マッサージ師会」の会員数は減少傾向にある。30年ほど前には約600人いた会員は、現在3割弱の約160人に減っている。12日に前橋市内で開いた総会でも、無資格者の台頭が問題提起された。狩野裕治代表理事(48)は「無資格者の対策は活動の柱の一つ。会員と密に連絡を取り合い、捜査機関に相談するなど積極的に行動したい」と述べた。

 10日に東京都内で開かれた「日本あん摩マッサージ指圧師会」の総会でも対策強化の方向で同意が得られた。安田和正会長(73)は「今の風潮だと視覚障害者が多い有資格者は競争原理からは排除され、泣き寝入りせざるを得ない。マッサージは資格がないとできないことを強く訴えていきたい」と話している。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(上田学)