【動画】高校野球第12回大会から、大阪・中之島公園と京都・円山公園に設置された試合速報器「プレヨグラフ」
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 テレビもラジオもない時代。熱戦が続くサッカーW杯ではないが、一刻も早くスポーツの結果が知りたい気持ちは今も昔も変わらなかった。約90年前、当時としては画期的な速報装置が人々の欲求に応えていた。

カーブの軌道も動きで表現

 「プレヨグラフ」。いまでいう将棋の大盤解説のようなものか。掲示板にダイヤモンドを描き、電話で試合の状況を聞いて、盤上のランナーを進めた。投球がカーブなら実際に人がボールの軌道を曲げて動かした。人海戦術でゲームを再現する、超アナログな「一球速報」だった。

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 これが、大人気となった。1926(大正15)年、第12回大会を速報するため、大阪市北区の中之島公園に登場すると、球場に行けない人々が「雲霞(うんか)のごとく押し寄せた」という。

 準々決勝、旧制前橋中と旧制静岡中の対戦は延長戦にもつれる大熱戦。十九回裏に静岡中がサヨナラ勝ちを決めると、「プレヨ・ファン」の絶叫が公園に響き渡ったと、当時の朝日新聞は伝えている。近くの天神橋や難波橋には乗り捨てられた多くの自転車が置き去りにされていた。数千人から1万人が集まったという。中には川向こうのビルから望遠鏡でのぞいていた人もいた。

高島屋の屋上にも

 同様の装置は、京都の円山公園や兵庫県西宮市の甲子園浜にも設置され、いずれも大評判を呼んだ。翌年からはラジオの実況放送が始まったが、しばらくは続いていた。戦後、1948(昭和23)年には、大阪・難波の高島屋屋上にも設置された写真が残っている。

 インターネットがこれだけ発達した昨今、アナログすぎる装置が現代に復活したらどのような反応が返ってくるのだろうか。案外ウケそうな気がする。(矢木隆晴)