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(21日、クロアチア3―0アルゼンチン サッカー・ワールドカップ)

 クロアチア戦後の記者会見は殺伐としていた。

 「この敗戦は屈辱であり、痛みが伴う」

 そう話したアルゼンチン代表のホルヘ・サンパオリ監督(58)に、責任を突きつける質問が繰り返された。W杯南米予選途中の昨年6月に就いて以来、静まったことのない批判はさらに高まっている。

 ロシアで指揮する32チームの監督のなかでも、この職の悲哀を最も感じさせるひとだ。

 4年前のブラジル大会で、チリ代表を率いて16強に導いた。首都サンティアゴでは、英雄扱いされた。2015年には南米選手権の決勝で、母国アルゼンチン代表を下して優勝した。あのときは、メッシを封じることに腐心した。

 このとき、練り上げたチリ代表はまさに全員攻撃、全員守備を体現していた。11人が献身の誓いを立てて走り、闘う。働き者として知られる国民性とマッチした。いまのアルゼンチン代表とは、似ても似つかない。

 サンパオリ監督は19歳でけがのために選手の道をあきらめ、早くから指導者の世界に入った。アルゼンチンでは選手としても、監督としても実績はない。それが容赦ない批判の背景にある。

 たとえば、1998年フランス大会の準々決勝で敗れたアルゼンチン代表を指揮したパサレラ監督は、長くプレーした名門リバープレート(本拠ブエノスアイレス)のファンが擁護に回った。国内に根っことなるクラブがないサンパオリ監督は孤独だ。

 メッシがいるからこその制約も否定できない。「鼓動」というタイトルの自叙伝で素直な言葉をつづっている。

 「メッシ抜きの普通のチームをつくるほうが簡単だ。天才がひとりいるとチームづくりは難しくなる」

 もちろん、世界一といわれるメッシを外しようはない。歴代の監督もメッシに自由を与える分、周囲にどの選手を置き、組み合わせるかの解を探ってきた。

 前回大会で準優勝までいったサベラ監督ですら、高い評価は得られなかった。それもこれも、メッシがいるのに勝てなかったからである。

 一方、昨年10月のW杯南米予選最終戦。メッシのハットトリックで予選敗退の危機を脱したときは、無能な男としてサンパオリ監督に批判が集中した。それは、勝っても、「メッシのおかげ」なのだ。

 話をクロアチア戦に戻そう。サンパオリ監督は、アイスランドとの初戦から先発を入れ替え、守備では4バックから好みの3バックを採用した結果、空転した。急な変更には監督としての意地、あるいは色気のようなものがあったように思える。

 「メッシに頼らず、チームをいじって勝たせてみせる」。そんな雑念が生まれていたのではないか。前日の記者会見では「メッシに2人、3人とマークがつけば、ほかの選手が自由になる。そこを活用したい」と話していたのだ。

 W杯を2度制覇する味を知った大国にとっては、目の前の結果がすべてだ。

 就任からちょうど1年。22年まで契約を結んでいる代表監督の置かれた環境は理不尽にも見える。(潮智史

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