穏健路線で安定優先 若者の反発鈍く 香港長官就任1年

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香港=益満雄一郎
【動画】就任から1年を迎えた香港政府トップの林鄭月娥行政長官=益満雄一郎撮影
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 香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が1日、就任から1年を迎えた。極端な中国寄りの政治で若者らの反中感情を高めた前任者から一転し、ソフト路線で社会の安定を優先。政治に対する若者の反応が鈍くなっていることも手伝って、中国に忠実な政策を着々と進めている。

 1日は中国に香港が返還されて21年を迎えた記念日で、林鄭氏は式典で演説。「この1年で、香港政府は経済発展や暮らしの改善で実績を出した」と胸を張った。

 林鄭氏は女性初の行政長官に就任後、企業減税のほか、教育や住宅難などの改善に着手。親中派と民主派が激しく対立する社会の亀裂の修復を目標に掲げた。

 就任式で習近平(シーチンピン)国家主席から求められた最大の宿題ともいえる「国家安全条例」の立法化を急がず、事実上、先送りする構えを見せているのもその表れだ。

 同条例は、国家の分裂や政権転覆につながる動きを禁じた香港基本法23条を具体化するための法制だが、自由や人権が制限されている中国本土のようになる恐れがあるとして、過去に反対運動が起きて頓挫した。香港政府幹部は「任期はあと4年ある。急いで着手する必要はない」と語る。

 こうした林鄭氏の穏健路線を習指導部が容認した背景には、急速に高まった反中感情を鎮め香港に対する統制を強めたい意向がある。香港は「一国二制度」によって高度な自治が保障されているが、評論家の劉鋭紹氏は「習指導部になって、北京と香港は完全に上下関係となった」と指摘する。

 前任の梁振英氏は、過度に中国寄りだとして市民の不満を高めた。2014年には民主化デモ「雨傘運動」が起き、若者らが香港の中心部を2カ月あまり占拠した。

 中国と香港の関係に詳しい外交筋によると、習氏は16年11月、外遊先のペルーで梁氏と会談し続投容認を示唆した。だが、梁氏の手腕を問題視する意見が巻き返し、習指導部は続投を認めないと決定。後任として香港政府高官だった林鄭氏を17年の選挙に立候補させる方針を決めたという。

 中国側からすればこの判断が奏功した格好で、香港大の世論調査によると、林鄭氏の支持率は政権発足以来、50%超を維持。30%台に沈んだ梁氏から回復した。民主派の対決姿勢も緩み、香港独立を求める勢力は退潮。習指導部の思惑通りの展開となっている。

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 香港の中心部では1日、中国政府や香港政府を批判する民主派のデモが開かれたが、参加者(主催者発表)は約5万人で前年と比べ約1万人減、雨傘運動直前の4年前の約10分の1に減り、盛り上がりを欠いた。背景には、林鄭氏の政権運営への若者の反発が鈍いことがある。

 雨傘運動で中心的に活動した…

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