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 「ボールをよく見て」。青森県弘前市の城南保育園で園児たちが女性保育士と一緒になって「野球遊び」をしていた。ティーに置いた軟らかいボールをバットで打ち、歓声を上げてベースに向かって走る。

 野球遊びは近くの聖愛高野球部が教えた。同校は2013年夏に甲子園に初出場した私立校。原田一範監督(40)は16年末、弘前市での「野球離れ」の現状を知った。少年野球の選手は06~16年で7割減っていた。「深刻な事態だ」

 17年のはじめから室内練習場を少年野球に開放。さらに市内の保育園や幼稚園で野球部員が野球遊びを広めてきた。鈴木完汰主将(3年)は「子どもたちが自然と野球で遊ぶようになるのが理想です」と話す。

 競技人口の減少傾向に歯止めがきかない野球に対し、裾野を広げてきたのがサッカーだ。

 今年で25周年を迎えたJリーグ。発足時から「百年構想」を掲げ、当初の8府県10クラブは38都道府県54クラブに増えた。プロを頂点とする欧州型の育成組織を築き、日本サッカー協会も指導者のライセンス制度を整えた。

 玩具メーカー・バンダイ(東京)が昨年実施した「小中学生のスポーツに関する意識調査」では、昨年まで3年連続で「体育の授業以外で行っているスポーツ」の男女総合ランキングは水泳・サッカー・テニスの順に上位3競技が独占。野球は昨年7位だった。上位競技は、部活動だけでなく民間スポーツクラブが盛んで、国際大会で日本選手が好成績を残している。また親が子どもにその競技をさせる理由のトップに「体力づくり」が挙がる。

 しかし、サッカーも安泰ではない。協会によると、小中学生年代では野球の競技人口を初めて上回った13年をピークに減少に転じた。少子化、スポーツの多様化、親の負担――。どの競技も子どもを引きつける手立てを模索している。

 では、野球に携わる人たちはどうしているのか。指導法研究や野球トレーニングの第一人者で、筑波大野球部監督の川村卓・准教授(48)は「ボールをきちんと握れない小さな子たちへ、野球の楽しさをいかに伝えるかが鍵だ」と話す。聖愛が地元で広げる野球遊びを考案するなど底辺拡大を図る活動で全国を巡り、競技性より楽しさを重視すべきだと訴える。「野球を子どもに返す」。そんな取り組みが始まっている。(辻健治)

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