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 2020年東京五輪の新競技になったスポーツクライミングは、スピード、リード、ボルダリングの3種目による「複合」で競う。その方式で初めて日本一を決める「ジャパンカップ」が6月23、24両日、盛岡市で開かれた。複合は五輪のために作られた新しい競技方式で、1日で「三刀流」をこなす体力勝負。ほとんどの選手にとって、初体験の競技方式だったが、選手たちの反応は――。

 「想像以上」「すごく疲れた」……。大会を終えた選手たちが口々に語り、ぐったりするなか、日本の初代「複合王者」に輝いた男子の楢崎智亜(TEAM au)も、金メダルを首に下げて苦笑いした。

 「結構ヤバいです。ボロボロ。今までにない感じで、全身がだるい……」

超ハード「とんでもない体力必要」

 競技スケジュールはかなりハードだ。例えば女子の決勝。午前9時半からスピードのトーナメントを戦ったあと、10時半からボルダリングの4課題に挑む。最終種目のリードは午後0時45分開始といった具合だ。

 運動量は単種目の試合の単純に3倍となり、日本代表の安井博志ヘッドコーチも「とんでもない体力が必要」と頭を抱える。

 昨年のボルダリング・ジャパンカップを14歳で制し、今大会は女子総合2位に食い込んだ伊藤ふたば(TEAM au)は、得意のボルダリングの前に、スピードで消耗し、「ボルダリングは疲労で頭が回らなかった」。同4位の野中生萌(同)も「間隔が短くて、ウォーミングアップがいつも通りにできない。不完全な状態で全力を出さないといけないから本当にきつい」と漏らした。

 ただ、力を抑えながら戦っていては勝てないのが複合の難しさだ。3種目の順位を掛け算し、ポイントが少ないほど上位になる仕組みのため、「各種目、1位が取れるとかなり有利」(安井コーチ)。

 女子総合優勝の野口啓代(TEAM au)は「温存していたら、やっぱり1位はない。“×(かける)1”を取るために全部を全力でやらないと」。つまり、力の抜きどころはなくなる。

強化方法、確立まだ

 歴史の浅い競技形式だけに、強化方法も確立されていない。「筋トレやランニングとは全然違うので、この3種目をグルグルやるしかないと思う。頭も使うし、動きも独特だから」と野口はいう。野中も「朝はスピードに行って、午後はボルダリングとリードをやるっていう練習の組み方をした方がいいかも。移動は大変ですけどね」と、模索している。

 日本のトップ選手たちは今季、ボルダリングのW杯に参戦しつつ、同時開催のスピードW杯にもエントリーするなど、複数種目をこなす体力作りを始めている。

 盛岡市でのジャパンカップを終え、安井コーチは「どんな疲れがあって、どの部位が特に疲れたのか。拾い上げて、強化するというトライ&エラーを繰り返すしかない」。複合を大会形式で行う試みは、他国はまだできていないという。「少しだけど、日本は早めに取り組めている。手を緩めずにいきたい」

 真夏の五輪のメダル争いは「三刀流」攻略のための、体力と心身のスタミナがかぎになりそうだ。(吉永岳央)

スピード、リード、ボルダリングとは

スピード 高さ15メートルの壁を登る速さを1対1の対戦形式で競う

リード 12メートル以上の壁に設置されたコースをどこまで登れたか高さを競う

ボルダリング 3~5メートルの壁に設定された複数のコースをいくつ登り切れたかで競う