シングルマザーとして2人の子を育ててきた名古屋市の山田真由美さん。認知症と診断されたのは51歳のときでした。「いつか子どもの顔もわからなくなるのか」と涙した日々から、どうやって自分らしさと笑顔を取り戻したのか。教えてほしいと思いました。
《講演などで話す機会があると、上着を着る動作を実演する。認知機能の障害のため、なかなか服の袖に手を通せない。一番の困りごとである「着替え」の様子をあえて見てもらう。そばの人が少し手助けすると、着替えはすぐに終わる》
補助がなければ着替えに4時間かかります。一番かかったときは9時間かな。鏡をみたら前後ろ反対だったりして、外出をあきらめることも。どんなことに、どんな風に困っているのかを伝えようと実演を始めました。ただ、困ってはいるけれども、ちょっとした周囲の手助けがあれば全然違うということもわかってほしいのです。
《一口に認知症と言っても、『困りごと』はそれぞれ違う》
私の場合、前日の出来事や人の顔なんかは割と覚えています。認知症=もの忘れ、じゃないんですよ。ただ約束や日付は覚えていても、時計の数字が読み取れない。文字もいまは自分の名前のサインも書けません。家を出るときも玄関の鍵穴にキーがうまく入らず、時間がかかってしまう。困りごとは本当にたくさんあるんです。
《20年以上続けた給食調理員の仕事を休職した後、しばらく家にこもった。認知症と知られたくなかった。若年認知症の交流会に参加するときも、顔見知りがいないか事前に確認したほどだった。ひとつの転機は『人間ドック』の受診だった》
思い切って、病院に『認知症なので着替えなどを手伝ってほしい』とお願いしてみたんです。そうしたら『いいですよ』って全部サポートしてもらえた。『あ、認知症だと伝えたらこんなに楽になるんだ』と思って。次はスーパー。商品の袋詰めや支払いがうまくできなかった。レジの人に打ち明けたら、驚くこともなく対応してくれました。お財布を渡すと、代金をとっておつりやレシートを入れて返してくれるんです。
じゃあ、もうウチのマンションの人にも全部言おうと思いました。エントランスでご近所の知り合いをつかまえては、「実は私ね、認知症でね」って話しかけて。みなさん「困ったら声かけてね」って言ってくれました。いま管理人さんは私を見かけるとオートロックの扉をあけるのを手伝ってくれます。ご近所の子どもたちもね、たぶん親に言われていると思うのだけど、傘をしまえなくて困っていると、「大丈夫ですか?」って声をかけてくれるんです。認知症を隠さなくなって本当に楽になった。それを伝えようと講演を始めました。
《長女香穂さん(28)と二人…
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