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 「言葉の意味を本当に理解できたのは最近なんです」。5月中旬、都城のグラウンド。城村竜主将(3年)は本部席のホワイトボードに立てかけられた色紙を指さしながら言った。「球道即人道(きゅうどうそくじんどう)」。高校野球の強豪、PL学園(大阪)を18年間率いた名将、中村順司さん(71)から球児に贈られた言葉だ。

 都城とPL学園といえば1984年の戦いが高校野球ファンの記憶に残る。

 左腕の田口竜二投手を擁する都城は春の選抜大会準決勝で桑田真澄投手、清原和博選手がいたPL学園と対戦。緊迫した投手戦の末、延長十一回に0―1でサヨナラ負けした。雪辱に燃えた都城は夏に再び甲子園で対戦したが、敗れた。

 当時の都城の部長、久保武司さん(現在、都城高校を運営する久保学園理事長)はPL学園のOB。試合をきっかけに中村さんと親交が始まり、PL学園が練習試合に来るなど学校同士の交流も続いた。

 中村さんは99年に名古屋商科大(愛知)に移ることになったが、そこで野球の指導を受けたのが現在の都城の監督、山田恭大(きょうた)さん(26)だった。

 山田さんは社会人野球を経験し、中村さんの紹介で昨年7月、都城の監督に就任した。新チームになって間もない昨年8月、学校を訪れた中村さんに山田さんは頼みこんだ。「子どもたちに色紙を書いてください」

 大学時代に中村さんから教わったあいさつ、お辞儀、姿勢の大切さ……。山田さんは「野球を通じて培った礼儀やマナーは社会に出ても必ず役立つ」と、中村さんの言葉を伝えたかったという。

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 中村さんは筆ペンを使って力強い文字で2枚の色紙を書いた。城村主将がチームを代表して受け取ったが、その意味がわからずにいた。

 城村主将は野球は真剣に取り組んできたが、授業態度の悪さから昨年10月、主将を1週間外された。修学旅行での遅刻を山田さんに叱られたこともあった。

 春の九州大会県予選から初めて捕手を任されると、マスク越しに客観的に仲間の様子が見えた。ボールを取ろうとあきらめずに手を伸ばす選手、学校生活で見せるようにミスを引きずってしまう選手……。普段の振る舞いや態度が、野球にも表れていると感じた。

 「あの言葉はどういう意味なんですか」。3年生になったある日、監督に尋ねてみた。山田さんは「野球は一つのボールを投げるにも、捕球やカバーする選手がいて、みんなで助け合う。社会でも一緒でしょ」。そして続けた。「野球を学びながら立派な人になってほしいという教えだよ」

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 中村さんは、言葉の意味について「野球の中に人生の縮図がある。しっかりした、強い人間になる意志がないと素晴らしい選手にはなれないよ」と語る。

 「こんにちは」。6月中旬、記者がグラウンドを訪れると、城村主将は真っ先に大きな声であいさつしてくれた。「まずは自分がみんなの手本になろうと思っています」

 都城は99年を最後に甲子園出場がない。「夏の大会は、これまでやってきたことが全部出る場所。全力で戦っていきたい」。37人の仲間と一つになって、初戦に挑むつもりだ。(高橋健人)

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