バントはしない、強気に打つ 犠打「今の子に合わない」

高岡佐也子
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 無死で走者が出たら、送りバントで1死二塁。打者が犠牲になり、アウトと引き換えに好機を広げる。高校野球「鉄板」の戦術がいま、変わりつつある。

 「バントは極力しない」。三重・小島紳監督(29)はそんな方針を掲げ、今春の選抜大会で49年ぶりに4強入りした。2回戦からの3試合では、無死または1死で一塁に走者が出た15回のうち、13回で強攻を選択した。一方、大阪桐蔭に敗れた準決勝は、5回中3回で犠打。監督は試合後「選手を消極的にさせてしまった」と悔やんだ。

 同校のグラウンドのベンチには、「一日千本」の標語が掲げられる。この冬は40分間で1千本素振りをするなどして打力を強化。冬場以外も、ノルマではないが、1日計1千本のスイングを目標にして、練習の8割を打撃にあてる。

 なぜ、打撃にこだわるのか。小島監督は送りバントについて「否定はしないが、今の時代の子たちに合っていないと感じる」と話す。1点を争う試合では、終盤のバントやミスが許されない守備など、重圧がかかる場面が多い。「全ての責任を1人に負わせるような野球は、精神的に負担が大きい。強気に序盤から主導権を取る方が(今の子に)合っていると思うんです」

 以前から打のチームとして評判の同校には、打撃が好きな選手が多く入る。「1球ごとに判断は変わるが、選手が好きな打撃を選択する。その方が、自分の力を出し切って、気持ちよく終われる」と、小島監督は言い切る。

 今夏は南北に大会が分かれる激戦の大阪。公立の大塚(南大阪)は、今春から打撃重視のチーム作りに切り替えた。相手にアウト一つをあげてしまうバント野球に限界を感じ始めていた3年前、春の府大会準々決勝で、後にプロ野球・ヤクルトにドラフト1位指名された好左腕・寺島成輝がいた履正社に0―7で完敗した。室谷明夫監督(35)は言う。「判で押したようなバント野球では、いい投手に重圧をかけられず、得点できない」。昨秋、無死や1死で走者が出た場面で強攻を試すと、5試合で45得点して8強入り。この春も5回戦まで勝ち上がった。

 同校のグラウンドはサッカー部などと共有。限られた環境でも、素振りを漫然としないことや、約15メートルの距離から強めに投げて140キロ程度の体感速度で打撃練習を行うなど、工夫を凝らして強化を図る。

 序盤に3点以上のビッグイニングを作って、主導権を握るのが勝ちパターン。選手の心境にも変化が現れている。1番打者の津島良丞(りょうすけ)(3年)は、昨秋まで「バント職人タイプ」の2番打者だった。バントは「安打と同じくらいうれしかった」と振り返る。それが攻撃的な戦術に切り替わり、今は津島もバントをほとんどしない。「打ってつなぐと流れが変わる。飛距離が伸びるとうれしいし、野球がもっと楽しくなった」

 バントをしない戦術は、打撃力の進化だけでなく、選手たちが野球を楽しむ原動力にもつながっている。高岡佐也子