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 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が18日、成立した。多くの人が使う施設を原則禁煙とし、罰則付きで義務づけるかつてない規制だ。全面施行は2020年4月。飲食店では半数以上が例外扱いなど骨抜きが目立つが、「受動喫煙ゼロ」に向け、社会は少しずつ動き出している。

 受動喫煙対策が急がれるのは命に直結する問題のためだ。「死亡や病気を引き起こす科学的根拠は明白に証明されている」。日本など世界180カ国以上が結んでいる「たばこ規制枠組み条約」は各国にこうした認識を求め、指針は「分煙では効果がない」とする。

 受動喫煙による国内の推計死者数は、年間約1万5千人。受動喫煙がある人はない人に比べ、肺がんや脳卒中になる危険性は約1・3倍になるとされ、3千億円超の医療費が余計にかかっているとの研究がある。

 一方、たばこを吸わない成人は8割超を占め、習慣的な男性喫煙者は20年前の5割から3割に減少。「たばこ離れ」が進む中、禁煙は広がり出している。

 6月から禁煙化した居酒屋チェーン「串カツ田中」では、199店の92%が全席禁煙。東京・代官山店を訪れた会社員の多胡尚美さん(47)は「煙や臭いが気になるので禁煙はありがたい」。禁煙後1カ月間で、直営店86店の売上高は2・9%減ったが客数は2・2%増えたという。担当者は「会社員や男性グループは減ったが、家族や女性が増えて手応えを感じている」と話す。

 ファミリーレストラン「ココス」や「サイゼリヤ」は19年9月までに全席禁煙にすると発表。コーヒーチェーン「コメダ珈琲(コーヒー)店」は新規店を禁煙にする予定だ。パチンコ業界でも全国に約400店を展開する「ダイナム」が禁煙店を増やしている。立命館大や信州大、関西外語大は、すでに敷地内を全面禁煙とし、今後も喫煙場所を設ける計画はないという。

 喫煙対策に詳しい産業医科大学の大和浩教授は「例外も多く満点ではないが、罰則付きで防止対策を義務づける法が成立したことは評価したい。今後は禁煙店が増え、受動喫煙の健康被害に対する意識も変わっていくだろう。ただ、例外部分は速やかに見直していくべきだ」と話した。(姫野直行、阿部彰芳)

改正法、効果乏しいとの指摘も

 「やっとかという気持ち。不十分な内容だが、対策のスタートにはなる」

 18日の参院本会議を傍聴した全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は改正法の成立後、そう語った。

 改正法の目的は、望まない受動喫煙をなくすこと。施行後は、学校や病院は敷地内禁煙に。それ以外の施設は喫煙専用室以外では基本的に喫煙できなくなる。厚生労働省は近く専門家会議を開き、今秋までに喫煙室の基準をつくる。受動喫煙防止の努力義務を事業所に課す労働安全衛生法の喫煙施設の基準を参考にする予定という。

 受動喫煙対策「後進国」だった日本が、罰則付きの義務にかじを切るきっかけは、東京五輪・パラリンピックの開催決定だった。国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は10年に「たばこのない五輪」の推進で合意。以降の大半の五輪開催国では、飲食店やオフィスを屋内禁煙とし、喫煙専用室すら認めていない。

 ただ、成立した改正法は他の開催国と比べて大きく見劣りする内容となった。

 厚労省は16年10月に示した「たたき台」から、飲食店や事務所に喫煙室の設置を認め、5カ月後の骨子案では30平方メートル以下のバーやスナックは喫煙可能とする例外措置を飲食店に導入。自民党の「たばこ議員連盟」などがさらなる緩和を求め例外対象は広がった。

 その結果、飲食店は例外的に客席面積100平方メートル以下などの既存店は喫煙可とし、禁煙の規制対象は全体の約45%。先月成立した東京都の受動喫煙防止条例では約84%が対象とされ、「国の規制は効果に乏しい」との指摘もある。4段階の「最低」だったWHOによる規制状況の評価も、全面施行で1ランク上がるだけだ。

 飲食店は受動喫煙を受けやすい場所だ。厚労省の16年の調査ではたばこを吸わない成人が月1回以上、飲食店で受動喫煙に遭う割合は42%。20代に限れば61%に上る。天野さんは「飲食店の経過措置は早期に見直してほしい」と訴えた。

 利用者が急増する加熱式たばこ…

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