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 高校野球の応援の変化がめまぐるしい。野球部員の保護者や学校OBが中心になって盛り上げる光景が広がる。奇抜な振り付けなどで観客も楽しめる工夫がSNSや動画サイトを通じて各校に拡散している。

 6月上旬、松山野球部(北埼玉)のグラウンドわきの食堂2階で野球部員の保護者数十人がメガホンを振り、跳びはねていた。今夏の北埼玉大会に向けた応援の練習で、応援団員から曲ごとの振り付けや歌詞を教わった。

 野球部父母会と応援団の合同練習は応援に迫力をつける目的で5年ほど前に始まった。休日には70人ほどの父母会ほぼ全員が参加するという。飯塚秀樹父母会長(47)は「自分も応援していて楽しい。3年最後の夏を全力で盛り上げる」。

 応援団OBの田嶋典行さん(47)は「昔は勝ち進むと吹奏楽部が来た。今みたいに初戦から応援に来るなんてなかった。その一方、みんなで授業を抜け出し応援に行った思い出もあるが、そんな時代でもなくなり、応援団や野球部以外で応援に来る生徒は明らかに減っている」と話す。滝島達也監督(51)は「30年前は保護者が応援に来るなんて考えられなかった。いま迫力がありすぎて緊張するくらい思いが伝わる」。

 松山には昭和から受け継がれる「定番」の応援もある。得点時に流れる「第一応援歌『空は晴れたり』」。観客同士で肩を組んで大合唱する。野球部主将の金子将大君(3年)は「あれがスタンドを一つにし、一気に流れを引き寄せる」と評価する。合同練習の時も、応援団員が「夏は何度も『空は晴れたり』が演奏されるはず」と言って、父母らを盛り上げた。

 慶応志木は、2010年から慶応大応援指導部出身者たちがスタンドで吹奏楽による応援を担う。当時同部に所属していた慶応志木野球部OBの計らいで実現。いま、現役慶大生や他大生まで規模が拡大。毎夏、多い年は30人ほどが参加する。主将の伊藤正貴君(3年)は「声だけの応援とは迫力が全く違う。後押しになる」と感謝する。

 昨年からは、慶応志木OBが作曲した応援曲「烈火」を採り入れた。短調で勇ましい曲調と、頭上でメガホンを回す動きが特徴だ。提案したのは、右翼手須田竜大(りょうた)君(3年)。慶応(神奈川)が地方大会や甲子園で演奏し、盛り上がっているのを動画サイトで見た。「ノリがよく、好機や重要な場面でスタンドが盛り上がるので、一気に流れを持っていける」

「ノリ」と「一体感」がキーワード

〈「高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究」などの著作がある梅津有希子さん(42)の話〉 高校野球の応援には地域差がある。関東圏で初戦から吹奏楽応援をする文化があるのは埼玉と千葉で、いずれも応援に熱心な県だ。

 最近は、強豪校の演奏や奇抜な応援がSNSや動画サイトで拡散し、素早く他校に採り入れられる。それにより、曲の入れ替わりが年々激しくなる一方、画一化の傾向もある。サッカーやバスケットボールの応援曲や振り付けを元にしている例もある。

 古くからの独自応援を続ける伝統校も多い。地域の人やOBが一緒に応援できるように、あえて変革をしないという事情もある。

 近年の応援は「ノリ」と「一体感」がキーワード。知らない人もついていける参加型の応援が増え、観戦する側も楽しもうという意識が強まっている。