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 ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々が迫害を受けた問題では、昨年8月以降だけで70万人が隣国バングラデシュへ逃れた。依然として厳しい難民たちの置かれた状況について、支援に取り組む国際機関の関係者に、それぞれ東京都内で聞いた。

国連人口基金事務局長「被害者支援、強化したい」

 世界の性暴力被害の根絶に取り組む国連人口基金(UNFPA)のナタリア・カネム事務局長は、ロヒンギャの女性が性暴力に遭う被害が相次いでいるとしたうえで、「被害者の肉体的、心理的な支援を強化したい」と述べた。

 UNFPAは、性暴力などに遭った被害者を保護する施設「セーフ・スペース」を、バングラデシュ南東部コックスバザール郊外の難民キャンプに開いている。カネム氏は5月下旬、この施設を訪問。話を聞いた女性の多くが目の前で夫を殺されたり、子どもとはぐれたりしたという。「幼い女児も被害を打ち明け、衝撃的だった」と語った。

 ロヒンギャ難民は国際機関に対し、バングラデシュに逃れる前に、多くの女性がミャンマーの治安部隊にレイプなどの暴行を受け、妊娠した人もいると訴えている。カネム氏は「被害者が被害の傷を癒やせるよう、施設での活動を充実させたい」と述べた。

 UNFPAの運営をめぐっては、トランプ米政権が昨年4月、資金の拠出を停止。国連全体では、仮設住宅の建設などロヒンギャ支援に必要な資金約1050億円のうち、2割ほどしかまかなえていないという。キャンプ地が雨期に入ると衛生状態も悪くなるため、カネム氏は国際社会が早急に支援する必要性があると訴えた。(軽部理人)

赤十字国際委現地代表 当面の帰還「難しい」

 救援活動にあたる赤十字国際委員会(ICRC)ヤンゴン代表部のファブリツィオ・カルボーニ首席代表は、ミャンマーとバングラデシュの両政府が合意した難民の帰還について、「(以前のように)移動の自由がないままでは、仮に家を建てても生計は立てられない。中長期的に帰還の可能性はあるが、難しい」と述べた。住民が安心して戻れる状態には当面ならないとの見通しを示した。

 ミャンマー西部ラカイン州の警察署が昨年8月、ロヒンギャの武装組織に襲撃された事件があった。ICRCは、武装組織が拠点とする同州の一部で活動を認められた唯一の国際組織だ。

 大勢の難民が国外に脱出するきっかけになった、事件後のミャンマー治安当局による掃討作戦の影響について、カルボーニ氏は「戦闘は収まり、都市部では、ある程度の経済活動も再開している」と現地の状況について語った。そのうえで、農村部では当局による破壊の状況がひどく、「人々が住める状況にはない」と説明した。

 カルボーニ氏は、国民とみなされず無国籍の状態にあるロヒンギャに国籍を付与することなど、ミャンマー政府による問題解決が必要だとの認識も示した。(古谷祐伸)