芥川賞候補作、参考文献示さず類似表現 掲載誌でおわび

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 今年5月に群像新人文学賞を受け、7月に選考のある芥川賞の候補作にも選ばれている北条裕子さん(32)の「美しい顔」について、講談社は29日、作品を掲載した「群像」6月号で主要な参考文献を明記しなかったと、7月6日に発売する「群像」8月号でおわびを掲載することを明らかにした。

 同作は、東日本大震災で被災した女子高校生の視点で描いた短編。同社によると、震災直後の遺体安置所などの被災地の様子を描く際、石井光太さんのルポルタージュ「遺体」(新潮社)に大きな示唆を受けていたが、「文献の扱いに配慮を欠き、類似した表現が生じてしまった」としている。ほかに「3・11 慟哭(どうこく)の記録」(金菱清編、新曜社)など計5作を参考にしていた。

 北条さんは5月の新人賞贈呈式で、「被災地に行ったことは一度もありません。遠い東京からただ見ているだけ、その私自身への憤りでした」と執筆の動機を話していた。

 参考文献は以下の通り。「3・11 慟哭(どうこく)の記録」(金菱清編/東北学院大学震災の記録プロジェクト、新曜社)▽「メディアが震えた テレビ・ラジオと東日本大震災」(丹羽美之、藤田真文編、東京大学出版会)▽「ふたたび、ここから 東日本大震災・石巻の人たちの50日間」(池上正樹著、ポプラ社)▽文芸春秋 2011年8月臨時増刊号「つなみ 被災地のこども80人の作文集」(森健取材構成、文芸春秋)

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