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 首都圏の駅前や繁華街で立ち飲みの居酒屋が増えている。出店や運営のコストを下げて低価格の酒や料理を提供。幅広いメニューをそろえる大手チェーンの居酒屋が苦戦するなか、節約志向や残業削減で早帰りする会社員らの「ちょい飲み」客を取り込む狙いだ。

 アクティブソース(東京都品川区)が運営する「立呑(たちの)み晩杯屋(ばんぱいや)」の五反田東口店。平日午後6時の店内では、肩が触れそうな間隔で会社員らが立ったままジョッキを傾けていた。会社員の男性(28)は「めちゃくちゃ安いけど、うまい。ちょっと飲みたいときに使っています」と話す。少人数で長居せず、少し飲んで帰る客が目立つ。

 晩杯屋は2009年に1号店を開業。約40店舗を年内に50店舗へ増やす。食材の旬に合わせてメニューを頻繁に変え、低価格のメニューを提供。つまみの大半が100円台で、「煮込み」(税込み130円)が最も人気のメニューだ。「『安かろう、悪かろう』ではない」(広報担当者)。

 ドラムカンパニー(東京都千代田区)が運営する「ドラム缶」はメニューの9割以上が300円以下。「チューハイ」は税込み150円で、千円で酔える「せんべろ」の店だ。テーブルの代わりにドラム缶を使用。神田店では酒とフードの受け渡しは、客がカウンターまで取りに行くセルフ方式で、人件費をかけない。都心部では家賃が安い2階以上に出店し、こうしたコスト節約で値頃なメニューを出している。

 「1回千円の利用でも、毎日のように来てもらえれば経営していける」(広報担当者)。16年に1号店を出し、現在13店舗。年内には30店舗に増やす計画だ。立ち飲み業態は、狭い面積でも出店しやすいという。

 たこ焼きチェーンのホットランド(東京都中央区)も首都圏を中心に立ち飲み業態の「築地銀だこハイボール酒場」を43店舗展開。1人平均1500円前後の支払いで、滞在時間は1時間半ほどと回転率を高くすることで収益を上げる。「会社員が立ち飲みでより気軽にコミュニケーションを図っている。『ちょい飲み』の利用が増えている」(同社)と言う。

 居酒屋業界では、メニューの幅が広い「総合居酒屋」が苦戦している。大手外食チェーンなどで組織する「日本フードサービス協会」によると、「居酒屋」の店舗数は17年まで7年連続で前年を下回った。居酒屋大手のワタミは「わたみん家」を今年度中に廃止する。総合居酒屋から、から揚げや焼き鳥に特化した業態へ転換を進め、売上高を回復させた。

 ホットペッパーグルメ外食総研の稲垣昌宏・上席研究員は、会社員の飲み方の変化を指摘する。「働き方改革などで、同僚と飲む機会が減っている。団体客相手の『大箱』の居酒屋は苦しい。立ち飲みは客にとってコストパフォーマンスがいい。好調な中食(なかしょく)とも価格で戦える」と分析する。(長橋亮文)