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 働き方改革関連法が成立し、企業は来年4月以降、労働時間規制の見直しや非正社員の待遇改善などで様々な対応を迫られる。関連法の施行を受けた企業労組の対応が、働き手に及ぼす影響も大きい。

高プロ 大半の企業は様子見?

 年収が高い一部の専門職を労働時間の規制から完全に外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が来年4月に導入されることになった。実際に導入する企業がどの程度出てくるかが注目される。

 全国の主要企業100社を対象に朝日新聞が5~6月に実施した景気アンケートで、高プロを「採用したい」と答えた企業は6社だったのに対し、「採用するつもりはない」が31社、「わからない」が51社にのぼった。

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は25日の記者会見で、高プロについて「経団連の中でこういうのは必要(な制度)だという議論をしていた」と導入の意義を強調しつつ、「各社がどういう格好で採用していくか(の検討)はこれからだ」と述べた。

 態度を決めかねている企業が多いのは、厚生労働省が今秋以降に対象職種などを省令で示す予定で、その内容を見極めようとしていることも理由のようだ。

 産業界には、高プロが働き手の自由度や生産性を高めるとの期待から、「選択肢の一つとして検討したい」(サントリーホールディングス)、「非常に関心を持っている」(日立製作所)といった声がある。

 ディーラーやアナリストなど想定される働き手として「名指し」される職種が多い金融業界では、「(省令の)内容を吟味した上、導入するかどうかも含めて検討していく」(三井住友銀行)といった姿勢が目立つ。日本生命保険の三笠裕司常務は「健康確保措置など、詳細が定まってから判断したい」と話す。

 一方、大阪ガスは現時点では導入しないとの立場だ。研究開発分野は対象になるが、藤原正隆副社長は「柔軟な働き方や労働生産性の向上につながる可能性がある一方、長時間労働が懸念され、健康障害につながることもありうる」と慎重だ。対象となる社員がいる三菱商事は、制度導入には労働時間や健康管理について労使協議が必要で、「やる、やらないと簡単に言える状況にはない」(広報)と説明する。

残業上限規制への対応は四苦八苦

 残業時間の罰則つき上限規制は、大企業には来年4月から適用される。残業時間の上限を「年720時間以内」「繁忙月の上限を100時間未満」とするなど、事実上青天井になっている残業時間に初めて法的な強制力がある規制が設けられる。規制強化を先取りして残業削減を進める企業がある一方、対応が遅れている企業も少なくない。

 朝日新聞は昨年、各地の労働局に情報公開請求するなどして、日経平均株価を構成する東京証券取引所1部上場225社の労使が結んだ残業時間の上限を定める協定(36〈サブロク〉協定)のうち、最も長い協定時間を調べた。その結果、昨年7月時点で少なくとも41社が規制の対象となる「月100時間以上」の協定を結んでいた。

 この時点で「年900時間」「月150時間」の協定を結んでいた東京急行電鉄は規制導入を見据え、今年4月に「年720時間」「月80時間」に協定を見直した。上限を引き下げるだけではサービス残業を誘発しかねないため、勤務時間が不規則になりがちな駅の係員や電車の乗務員の要員確保策として、配置転換を進めたり採用を増やしたりしたという。

 「月120時間」の協定を結んでいた東京電力ホールディングスは、今年4月に最長で「月125時間」の協定を結んだ。年度初めに管理部門が忙しくなるため、協定時間をむしろ延ばした。他部門の社員を臨機応変に配置できるような仕組みを検討し、来年4月までに月100時間未満に収まるようにするという。

 「月140時間」で結んでいた住友重機械工業は「月120時間」に引き下げたが、対応は道半ばだ。製品の据えつけや点検は取引先の工場の操業を止めて集中的に実施するため、その期間は長時間労働になりやすく、上限の引き下げが難しいという。担当者は「事業部門ごとに総労働時間の削減の進捗(しんちょく)に濃淡が生じている。残業抑制は容易ではない」と説明する。

同一労働同一賃金の効果未知数

 非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」も働き方改革関連法の柱の一つ。大企業は20年4月の適用に向けて対応を迫られる。NTTグループが5月から、正社員と非正社員の間で待遇差があった福利厚生制度を、健康管理のメニューを中心に正社員の制度に一本化するなどの動きはあるが、いまのところ企業の動きは総じて鈍い。

 政府は今後、どんな待遇差が不合理になるかを具体的に示すガイドライン(指針)を策定し、改正法の施行と同時に指針に効力を持たせる予定で、指針の内容を見極めようとする企業が多いとみられる。政府がすでに示している指針案は抽象的な表現が目立ち、「各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれる」としている。実際に格差是正が進むかどうかは、各企業の労使の対応に左右されそうだ。