拡大する写真・図版 後半、2点目のゴールを決め喜ぶ乾⑭と香川=長島一浩撮影

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(2日、ベルギー3―2日本 サッカー・ワールドカップ)

 かつてはパスも出さず、互いの得点も喜ばなかったライバル同士が生んだゴールが、日本代表を8強まであと一歩に迫らせた。ともにJリーグのセレッソ大阪でプレーし、しのぎを削ったMF乾貴士(30)とMF香川真司(29)だ。

 後半7分。香川が敵陣ゴール前でキープしたボールを後ろに落とす。このパスを乾がトラップすると、ペナルティーエリア外から右足を一閃(いっせん)。「打った瞬間にいい感じだなという感触」。強烈なシュートがゴール右に突き刺さった。あうんの呼吸でもぎとった2点目だ。

 乾には約10年前、腐りかけた時期があった。その心に火をつけたのは香川だ。

 滋賀・野洲(やす)高で全国高校選手権を制した乾はプロ2年目の2008年、横浜F・マリノスで出場機会に恵まれず、当時J2だったセ大阪へ移籍した。そのセ大阪にいたのが、地域のクラブチーム育ちで、セ大阪に才能を認められた香川だった。ともに小柄で技巧派MF。同学年の2人が互いを意識しないわけはなかった。

 乾は香川が試合でゴールを決めても喜ばない。逆に乾がゴールを決めても香川は喜ばなかった。ひどい時はお互いパスも出さない。当時を知るセ大阪の小菊昭雄コーチ(42)は「今では笑い話になっているけど、貴士は真司を相当意識していた」と明かす。

 09年のJ2のリーグ戦では、乾が47試合で20得点、香川は44試合27得点。結果的に高め合った2人は、セ大阪をJ1昇格に導いた。

 10年、香川がドルトムント(ドイツ)へ移籍、11年に乾もドイツへ渡った。小菊コーチは「今はすごく仲が良い。リスペクトしあっているし、意識しあった時間がよかったのかも」。

 W杯ロシア大会では、初戦と2戦目、そしてこのベルギー戦で、2人は先発に名を連ねた。定位置は2列目の左に乾、中央に香川。乾は言う。「真司とはやりやすい」。乾は2得点1アシスト、香川はPKで1得点、そしてベルギー戦で乾のゴールを演出した。

 ベルギー戦は後半中盤から3失点し、逆転負け。乾が「悔しい。(大会を通しては)このチームはすごく頑張った」と言えば、香川は「僕たちはすべてをだした。失点してしまったのはしょうがない」。

 セ大阪で出会って10年。2人が初めてそろって出たW杯で、悔しさとともに、確かな充実感も手にした。(堤之剛=ロストフナドヌー、大西史恭

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