「戸が開かん、助けて」 放たれた濁流は住民残る集落へ

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 7月の西日本豪雨では7日早朝、愛媛県西予市の野村ダムが下流への放水を急激に増やす緊急放流に踏み切った。正式には「異常洪水時防災操作」という処置だ。流入する水を受け止めきれなかったダムから放たれた濁流は、まだ住民の残る肱川(ひじかわ)下流の同市野村地区を襲った。(大川洋輔、沢木香織、長谷川健)

野村ダムと西予市

肱川上流の愛媛県西予市にある「野村ダム」は、県南部のかんきつ農家の水不足を解消するなどの目的で1982年に造られた。1270万トンの水をためられる。西予市は「平成の大合併」により、2004年に旧野村町を含む5町が合併してできた。現在の野村町は旧野村町時代から酪農や畜産が盛ん。かつては養蚕業も栄え、「ミルクとシルクの町」と呼ばれる。

【7日6:30ごろ】

 野村地区で、消防団員らによる避難の呼びかけが終了した。大森仲男さん(82)、勝子さん(74)夫婦は2度にわたって消防団員に声をかけられた。だが、後になって水に沈んだ自宅の玄関そばで亡くなっているのが発見される。市の関係者によると、仲男さんは介護が必要な状態だったという。

【6:30】

 野村地区の下流。大洲市の消防団が鹿野川地区の詰め所に集まった。老人ホームの近くで土砂崩れが起きたという情報が入り、緊張が走る。「二つの班は土囊(どのう)作り! 残りは町の警戒!」。分団長の指示が飛んだ。

【6:37】

 「河川、越水!」

 野村地区。肱川の近くで活動していた消防隊員から無線が入った。地区にはまだ、住民らが残っていた。

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