7月の西日本豪雨で流れ込む水を受け止めきれず、流域の二つのダムが異常洪水時防災操作(緊急放流)を行った愛媛県の肱(ひじ)川。川沿いの西予市と大洲市で相次いで氾濫(はんらん)が起き、住民らは混乱に陥った。最下流の大洲市では、ダムの放流量が増えることを知らせる警報が、必ずしも届いていなかった。

異常洪水時防災操作(緊急放流)
豪雨時に水をためて下流の水位上昇を抑えていたダムが満水に近づいた時、緊急的に流入する量とほぼ同量の水を放つ操作。ダムの決壊や破損を防ぐ手段だが、急激に川の水位が上がるため、下流の住民らの避難が必要なケースもある。
【動画】西日本豪雨で緊急放流をした鹿野川ダム=四国地方整備局提供

【7日8:00】

 大洲市消防団の二宮孝志・分団長(50)のもとに消防団の本部からダムの放流を知らせる無線連絡が入った。ただ、放流量までは知らされず、住民らの避難に向けた動きは必ずしも素早いものとは言えなかった。

 二宮さんが地区を回ると、川沿いの住宅の敷地に水が押し寄せ、水位がみるみる上昇していった。道路も冠水していた。「避難してくれー。死んでまうぞー」「車を捨てろ!高台に行け!」。消防車のマイクを握って叫んだ。

 「まだうちにばあちゃんがいるんです!」。住民が叫ぶ。消防団員が急いで家に駆けつけ、高齢女性を消防車に乗せた。

鹿野川ダムと大洲市
肱川下流の愛媛県大洲市周辺では戦前から大洪水が繰り返され、1959年に2980万トンの水をためられる「鹿野川ダム」が完成した。肱川は大洲市の中心部を流れ、肱川の鵜飼いは市の観光資源としても知られる。市内には明治や大正期の建築物が残るエリアがあり、風情ある町並みから「伊予の小京都」と呼ばれる。

【8:20】

 大洲市の地元消防団の二宮和也さん(39)が自宅近くの橋で水位を確認していると、肱川支流の河辺川の水位が一気に増し、川が橋をのみこんだ。肱川の水位が上がったことで河辺川の水が逆流したとみられる。橋にいた二宮さんは足をすくわれ、おぼれた。高台に続く坂道まで数十メートルを何とか泳ぎ切った。

 「ちょっと死にかけた」。二宮さんはその後、消防団員の仲間らにこうLINEで報告した。「本当に死にそうだった。ダムの緊急放流の話は知らなかったし、サイレンも聞こえなかった」

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