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 博多人形師の田中勇さん(46)=福岡市早良区=は今年初めて、博多祇園山笠の舁(か)き山人形を制作した。四番山笠・土居流(ながれ)で、標題は「歌舞伎十八番 暫(しばらく)」。流の責任者「総務」を務める中山雄介さん(72)が思いを込めて題材を決め、歌舞伎好きの田中さんが「楽しんで作った」力作だ。

 田中さんは師匠でもあった父比呂志さんを2016年12月に亡くした。79歳だった。土居流の区域にある上川端通の飾り山を長く一緒に手がけた。今年、土居流の当番町を7年ぶりに担う上新川端町は、田中さんの工房と関係が深い。飾り山だけでなく、舁き山の人形もいよいよ単独で引き受けたのが今年だった。

 戦後、土居流が復活した1951年の当番町も上新川端町で、その年の題材(見送り)も歌舞伎の「暫」。中山さんの父は当時、山笠を動かす「取締(とりしまり)」と呼ばれる役職者の一人だった。そんないきさつから、「作ってみようと思った」と中山さんは言う。

 「お前には才能がないけん手を抜くな」「お前はたまに人を驚かせることをする。そこを伸ばせ」。田中さんは亡き父の言葉を忘れない。どれだけ粋に表現できるか――。その一心で完成させた人形を、田中さんも中山さんも、満足そうに見つめた。(貞松慎二郎