日本で一番速い楢崎智亜の登りと、世界トップクラスのロシア選手の登りの比較
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 2020年東京五輪の新競技に決まったスポーツクライミングは、ボルダリング、リード、スピードの3種目の複合で争う。この中で、日本最大の弱点はスピードだ。2年後の地元開催の五輪に向けて急ピッチで強化が進むが、目標タイムはまだ遠い。日本勢は、ボルダリングとリードで上位が見込めるものの、メダル争いに確実に絡むには、スピードの克服を避けて通れない。

 「6秒87」

 盛岡市で6月にあった複合ジャパンカップで、楢崎智亜(TEAM au)がスピードの日本新記録を打ち立てた。どよめく観客にガッツポーズで応え、「無意識で行ったら新記録が出たっていう感じ」。

 ただ、五輪表彰台を狙うための水準として日本代表のコーチ陣が求めているのは、男子が6秒20、女子が8秒60。女子の日本記録は野中生萌(同)が4月にマークした9秒37で、男女とも目標タイムには届いていないのが実情だ。安井博志ヘッドコーチは、「重圧もある中、常にベストタイムで戦えるわけではない。五輪までには(目標値を)目指したい」とする。

 その他のトップ選手たちの自己記録も、男子の藤井快(同)は7秒81、女子の野口啓代(同)は11秒61、伊藤ふたば(同)は10秒08。安井コーチは「世界と戦うところに近づいている感覚はある」としながらも、「まだまだこれから」。100分の1秒を争う種目にあって、ここから目標タイムまで縮めていく作業は簡単ではない。

スピード ロシアは2358点、日本は1点

 日本はボルダリングのW杯国別ランキングで4年連続1位に輝いているほか、リードも昨季は3位とトップクラスの実力がある。ただ、スピードだけは例外で、昨季は国別ランキング21位。ロシアが「2358点」を積み上げてスピード1位になったのに対し、日本は「1点」という惨状で、そもそもスピードに取り組む文化がなかった「スピード後進国」だ。

 複合は3種目の順位を掛け算し、ポイントが少ないほど上位になるルール。楢崎も「1種目でも順位を落とすと数字がかなり大きくなる」と、スピード強化の必要性は自覚している。

 その対策のため、日本山岳・スポーツクライミング協会が動いた。

 昨年11月から、「強化プロジェクト」を開始した。日本ランキング制度を創設したほか、練習会とセットになった記録会を毎月複数回行ってきた。昨年10月のW杯では7秒85だった楢崎が、約8カ月でタイムを1秒近く縮めたのはその成果だった。

 スピード壁は高さ、傾斜、ホー…

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