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 名古屋鉄道が不動産事業への投資を大幅に拡充する。沿線人口の減少が見込まれるため、再開発で街の魅力を高めて利用者を増やす必要があるからだ。

 名鉄名古屋駅から3駅。神宮前駅は名駅へのアクセスが良く、特急停車駅でもあるのに近くの商店街は閑散としている。シャッターの閉まった店も少なくない。てこ入れできると判断した名鉄は、2020年度をめどに駅東側に、賃貸住宅を併設した複合商業ビル(地上12階建て)を建設する。西側の自社ビルも建て替え、近隣活性化も考える。

 駅周辺の再開発は、この他にも目白押しだ。東岡崎、新安城、豊田市……。大曽根、常滑、江南は駅直結の商業施設をつくる。名駅は南北400メートルの新ビルにする予定で、22年度に建て替え工事が始まる。名駅近くに持つ4カ所(計約8千平方メートル)の土地も活用する。安藤隆司社長は「沿線の魅力づくりのために、老朽化した資産のリニューアルを進める」。今後3年で不動産に振り向けるお金は約500億円。グループ全体で計画する成長への投資額(700億円)の7割超を占める。

 ローカル線を多く抱える名鉄は、鉄道事業で利益をあげにくい。今年3月時点の試算では、少子高齢化の影響で、沿線人口が今後20年ほどで714万人から約7%減って667万人となる見込みだ。名鉄にすれば、地域の将来性を高め、新たな住民を呼び込むことが欠かせない。巨額投資に踏み切る背景には、そうした事情がある。

 大手私鉄は既に、この分野で先行している。東京急行電鉄は、民間再開発としては都内最大級となる二子玉川ライズ(東京都世田谷区、11・2ヘクタール)の街づくりを手がけ、15年に第2期の開発を終えた。高層マンションや映画館、ホテル、商業施設だけでなく、楽天本社などのオフィスも加わって二子玉川駅の利用者が増加。同駅の15年度の乗降者数は、田園都市線が前年の17・8%増、大井町線が18・7%増で、東急全線の駅で突出した。渋谷でも6件の開発を進めている。阪急阪神ホールディングスは梅田駅周辺の商業施設やビルの賃料収入が好調で、18年3月期の営業利益(1052億円)の4割、409億円を不動産で稼ぐ。今期は不動産の営業利益が鉄道事業を超える見通しだ。

 名鉄で不動産を担当する高崎裕樹専務は「地域との関わりや沿線開発で、ほかの鉄道会社より遅れた」と認める。というのも、名鉄はバブル期にサイパンのホテル事業や北海道のバス事業にも手を広げ、経営不振に陥った経緯がある。1990年代半ばから合理化に取り組み、最近になってリストラが一段落。2018年3月期の純利益が過去最高の286億円に達するなど資金に余裕が生まれ、ノウハウも蓄積してきたという。高崎氏は「地域全体の価値を高める再開発をしたい」と話す。(友田雄大)