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 実感が乏しいまま、「拡大」といわれてきた景気の先行きに黄色信号がともった。2日公表の日本銀行の6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の景況感が2四半期(6カ月)連続で悪化。消費者の節約志向が強まり景気に勢いがない中、原材料高や米国発の貿易摩擦が、好調だった企業収益にも影を落としつつある。

 都内の百貨店で6月29日から始まった夏のセール。婦人服売り場は初夏ものが2~4割引きとあってにぎわう。訪れた女性(38)は「子どもが生まれてから自分の服はファストファッションばかり。百貨店はセールでないと手が出しにくい」と話した。

 百貨店の衣料品売上高は4年連続で前年割れ。今年は7月末にセール第2弾を構え、さらに客の「買う気」を刺激する。

 背景にあるのがネット通販との競争激化だ。消費者はネットと店舗の価格を厳しく比較している。日本アパレル・ファッション産業協会の遠藤孝顕事務局長は「実店舗の需要が急激に下がっている。消費者の『買いたい』という気持ちを喚起する仕掛けが必要だ」。

 コンビニ大手7社の5月の既存店の客数は27カ月連続でマイナスだった。ファミリーマートの沢田貴司社長は「特に若い人は、商品の価格差について敏感だ。安いドラッグストアやネットに流れている」。

 「お客さんは数円の値上げにも敏感です」。東京都板橋区のスーパー「いさみ屋 小竹向原店」の三原裕治店長は言う。小麦の値上がりで大手メーカーのパンの仕入れ価格が1日に値上がりしたが、食パンなど主力商品は販売価格を据え置き、店で吸収するという。

 消費者の「節約志向」の前線に立つ小売業の業況判断指数(DI)は今回の短観では急激に悪化。前回調査より11ポイントも下がった。

 原油高に端を発した原材料高や物流コストの増加、人手不足による人件費の増加が企業の収益を圧迫する。省力化投資は活発だが、賃上げの動きは鈍く、消費増につながらない。第一生命経済研究所の熊野英生氏「昨年10月から続く原油の値上がりが、ボディーブローのように企業の収益に効いてきている」と指摘する。

 景気の先行きで最大のリスクとなりつつあるのが、トランプ米政権の保護主義だ。日本も鉄鋼・アルミ製品の高関税の標的となり、今後は自動車の高関税も検討される。大和総研の試算では、米国に輸出される自動車や自動車部品に25%の関税がかけられた場合、メキシコやカナダなどからの輸出も含め、関税額は2兆2千億円も増える。日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は先月、追加関税の検討に「強い懸念を表明する」とコメントを出した。

 スバルは昨年米国で64万8千台を販売し、うち半分は日本からの輸出だ。今秋には全量を日本から輸出する主力SUV(スポーツ用多目的車)フォレスターを米国で売り出すが、強い逆風を受けかねない。中村社長はトランプ政権の政策について「非常に影響が大きい」と気をもむ。短観では自動車の景況感(DI)が7ポイント悪化し、先行きも2ポイントの悪化を見込む。

 自動車タイヤをつくる住友ゴム工業の池田育嗣社長は、トランプ氏の強硬姿勢について、「就任から1年もたてばトーンは下がると思っていたが、逆に再燃してきた」と心配する。(高橋末菜、牛尾梓、木村聡史、伊藤弘毅)

日銀6月短観のポイント

・大企業・製造業の業況判断指数(DI)はプラス21で、3月調査から3ポイント悪化。悪化は2四半期(6カ月)連続で、2四半期連続は2012年9、12月調査以来。大企業・非製造業はプラス24で1ポイント高くなり、4四半期(12カ月)ぶりの改善

・大企業・製造業の自動車がプラス15で7ポイント悪化。悪化は17年6月以来

・大企業・全産業の18年度の設備投資計画は前年比13.6%増と高水準に。人手不足で省力化のための機械導入が盛んに

・大企業・製造業の18年度の想定為替レートは1ドル=107円26銭。3月調査から2円以上円高ドル安方向に。輸出企業は今後の円高を想定しており、収益悪化要因に