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 第100回全国高校野球選手権記念神奈川大会が8日開幕する。ニューヨークに拠点を置き、NHKと共同で日本の高校野球のドキュメンタリー作品を制作している映像作家の山崎エマさん(29)も、横浜スタジアムに取材のため、足を運ぶ。「規律正しく整列している選手の姿を撮影したい」。作品は8月にNHKで放送され、さらに海外向けも作るつもりだ。

 山崎さんは19歳だった2008年、映像制作を学ぶために渡米。「アメリカに来て、日本に暮らす人々の譲り合いや周りへの気遣いを実感した」。日米両国で暮らしたことがある自分が、日本社会を紹介したいと考えていた。

 昨夏の選手権大会の準決勝と決勝をテレビで観戦して、「礼儀正しく、敗れてもりりしく去っていく姿は、アメリカの野球と全く違う」と感じた。

 米国では、テレビ放送で高校野球を目にすることは少ない。だが、日本では街のいたるところで試合が流れ、多くの人々が熱狂していた。「改めて驚いた。そんな姿を盛り込んだら、日本社会を考える手がかりになるのでは」と、高校野球を作品のテーマに決めた。出場校が多く、野球愛の強い横浜を主な取材地に選んだ。

 取材を進めると、高校野球の精神は部員に深く浸透していることに気づいた。「ヘルメットやグラブを丁寧に並べたり、近隣の人々に立ち止まってあいさつしたり。自分の好きな日本人の姿があった」。

 意外なこともあった。日本は犠牲バントが多い印象だったが、近年は減少傾向。「より積極的なプレーが選手個人に求められるようになったのでは」。高校野球の変化を通じて日本社会の変化を捉えることもできるという。

 「球児の姿は日本社会の縮図。全国制覇したチームのみせる姿が、これからの日本社会にも影響を与えるはず」。今夏の100回という節目の大会で、選手たちがどのようなプレーを見せるのか。どんな練習を乗り越えたチームが優勝するのか。数々の試合や選手たちの姿を作品に収めたい。(田添聖史)