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 政府は3日、エネルギー政策の中長期的な方向性を示す「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定した。2030年度の電源構成に占める原発の比率を「20~22%」にするとの政府目標を新たに盛り込むなど、原発推進の姿勢を維持。一方、再生可能エネルギーは、地球温暖化対策のパリ協定発効を受け、「主力電源化」をめざす方針を初めて打ち出した。

 「安全最優先の再稼働や使用済み燃料対策など、必要な対応を着実に進める」。世耕弘成経済産業相は閣議後の会見で語った。

 計画では、前回に続いて原発を「重要なベースロード電源」と位置づける。だが、現実との隔たりは大きい。

 原発比率「20~22%」を達成するには30基程度の再稼働が必要だが、福島の事故後にできた新規制基準のもと再稼働したのは9基。17基(建設中の3基も含む)がそれに続くというが、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)など地元同意の難航が予想される原発や、活断層が原子炉建屋に走る原発もあり、目標達成は「もはや絵空事」(橘川武郎・東京理科大教授)と指摘される。それでも政府は15年に決めた電源構成の目標を見直さなかった。

 原発の運転期間は最長60年と定められ、古い原発を建て替えるなどしなければ、原発は70年ごろにはゼロになる。だが、前回同様、計画では原発の新増設の是非に触れなかった。

 経済産業省は当初、新増設の必要性を書き込むことを模索したが、首相官邸から「門前払いを受けた」(関係者)という。新増設を認めれば世論の反発を招きかねず、憲法改正などほかの政策課題を優先したい官邸は、時期尚早と判断したとみられる。

 福島の事故を受け、原発の建設費は上昇し、海外では最新鋭タイプが1基1兆円の時代に入った。政府が成長戦略に掲げる原発輸出も、日立製作所と三菱重工が英国とトルコでそれぞれ苦戦しているが、計画はあくまで原発輸出の「推進」を掲げる。

 使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する核燃料サイクルも引き続き「推進」としたが、現実は行き詰まっている。

 サイクルの中核に位置づけられてきた高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が16年末に決定。政府がその後継と位置づけるフランスの高速炉計画も出力規模を大幅縮小する方向となり、雲行きは怪しい。

 日本が国内外に抱えるプルトニウムの量は原爆6千発分の約47トンに増えた。米国が核不拡散の観点から問題視していることから、計画には「保有量の削減に取り組む」との表現を初めて盛り込んだ。

 だが、ふつうの原発でプルトニウムを燃やすプルサーマル発電は滞る。2・9兆円かけた六ケ所再処理工場(青森県)が完成しても操業は大幅に制限される可能性があり、プルトニウムを減らす具体的な手立ては示せていない。「サイクルは破綻(はたん)している」との声が政権内からも上がる。

 一方、「主力電源化」をめざす再生エネについて、政府は30年度の電源構成に占める比率を「22~24%」にする目標だ。

 12年に始まった固定価格買い取り制度で導入が進み、再生エネの比率は10年度の約10%から16年度に約15%まで増えている。外務省や自民党の一部議員らは今回、再生エネ目標を引き上げるよう求めたが、経産省はこれに応じなかった。

 海外では大胆な数値目標を設定して普及を図る国があり、30年時点で、ドイツは65%、フランスは40%を掲げる。こうした欧州諸国は、日本のように原発や石炭火力を「ベースロード電源」として頼る考え方でなく、安価な電気を競争原理を働かせて融通し合うシステムが築かれようとしている。

 一方、日本では、大手電力が送電線の空き容量がないとして、再生エネの接続を拒否する事例が相次ぐ。世界に比べ導入比率が圧倒的に小さい風力をどう伸ばすか、割高な発電コストをどう下げるかも課題だが、今回の計画では「主力電源化」に向けた抜本的な解決策までは示されていない。

 電力システムに詳しい高橋洋・都留文科大教授は「日本は再生エネをどこまで政府が推進するのか不透明な点が多く、事業者が長期的に安心して投資できない。コスト低減を促すためにも、導入目標を高めるとともに系統接続問題を解消すべきだ」と指摘する。(関根慎一、桜井林太郎)