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 柏の葉のマネジャー青木咲良(さくら)さん(3年)は、金曜の練習が終わると、急いで帰途につく。電車を乗り継いで向かうのは、千葉県流山市西初石のラーメン店「Kiriya」。切り盛りするのは、父成憲(よしのり)さん(44)と母陽子さん(43)だ。咲良さんはエプロン姿で厨房(ちゅうぼう)へ入り、流し台の食器を丁寧に洗う。ドアが開くと振り返り、声を上げた。

 「いらっしゃいませー」

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 小学生のとき、ドラマ「ROOKIES(ルーキーズ)」を見て高校野球に憧れた。中学ではソフトテニス部に入ったが、高校で念願だった野球部のマネジャーに。けれど、慣れない作業に最初は戸惑った。

 あれはヒット? エラー? 基本的なルールやスコアの付け方など勉強することが山積みだった。選手の飲み水を準備し、大会前にはお守りを作る。そんな裏方の仕事が大半だが、チームの勝利のためなら苦にならない。「誰かのために働く楽しさを知った」と話す。

 家業の手伝いを始めたのも、マネジャーになった頃だった。自動車整備会社を経営する成憲さんのラーメン好きが高じて一昨年に自分の店をオープン。煮干しでだしをとったスープや自家製の麺が好評で、今では開店前から行列が出来る。両親だけでは店が回らず、練習後や休みの日に手伝うようになった。

 空になりそうなコップに水を注ぎ、食べ終わった器を片付ける。成憲さんはそんな娘の姿に「マネジャーになってから気が利くようになった」と目を細める。

 チームが勝つために、お店が繁盛するように――。咲良さんは日々、全力投球でグラウンドや店に立つ。

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 千葉市緑区の「すしどころ まなぶ」。週末の飲食客でにぎわうカウンターの奥の厨房で、丸刈り頭の少年が黙々と皿洗いをしていた。桜林の及川龍之介君(3年)だ。

 すしを握る父の英明さん(49)は元高校球児。及川君は英明さんの影響もあり、小学1年で野球を始め、中学では強豪のリトルシニアでプレー。高校は自宅に近い桜林へ進んだ。

 練習は中学時代の方が過酷だった。でも、先発出場する機会はほとんどなく、「自分がいなくても誰も困らないのでは」と悩むこともあった。一方で、今の及川君は力強いスイングが持ち味の打線の要だ。英明さんは「高校に入ってからの方が、生き生きしているように見える」と話す。

 及川君は桜林に入学後、「なんとなく」、店の手伝いを始めた。厨房に立つのは、主に休日の夕方。予約がたくさん入って店が混雑しそうな日には、英明さんから「今日は頼む」とメールが来る。及川君は「好きな野球をやらせてもらえるのは両親のおかげ。手伝うのは当然」という。

 桜林は12日の初戦で、甲子園に出場経験のある市銚子と対戦する。「桜林の持ち味は打力。豪快に攻めたい」。元球児の父と母への感謝を胸に、自らのバットで勝利を呼び込みたいと意気込んでいる。(松島研人)

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