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 企業が不祥事を起こしたときに作る「第三者委員会」の報告書を客観的に検証している弁護士らが、品種偽装問題を起こした「雪印種苗」(札幌市)の報告書に過去最高の評価を与えた。過去に検証した神戸製鋼や日産の報告書には厳しい評価が下されたが、今回の報告書は何が違うのか。

 弁護士らでつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」(格付け委)は3日に記者会見し、雪印種苗への評価結果を明らかにした。評価した9人のうち、1人は5段階で最高の「A」、残り8人は2番目に高い「B」をつけた。久保利英明委員長は「第三者委報告書の歴史の中でまれに見る成果」とたたえた。

 雪印種苗は、乳業大手・雪印メグミルクの子会社。今年4月、牧草種子の品種を偽装して販売していたと発表し、赤石真人社長が引責辞任した。

 偽装問題は内部告発がきっかけ。同社や独立行政法人・家畜改良センターによる調査で、種子の表示などで違反があったことが判明。同社が依頼した第三者委員会が2月から本格的な実態調査に乗り出した。

 その調査は徹底していた。報告書によると、雪印種苗や親会社の雪印メグミルクの役員ら45人に延べ61回のヒアリングを行い、関係する役員らのパソコンやメールサーバーから、計約61万件に及ぶ過去のメールや添付ファイルを抽出。削除されていたものは復元させた。現役の役員や社員計約600人を対象にアンケートも行い、254ページの報告書にまとめた。

 一連の調査では、社内では過去にも偽装行為が問題になっていたのに、きちんと事実を解明しようとしてこなかった社の姿勢も浮き彫りにした。

 報告書によると、同社では2014年と17年の2度にわたって偽装行為などに関する社内調査を行い、報告書もつくっていた。14年の報告書は「02年1月ころまで不適切な行為が行われていた」と指摘したものの、当時のデータはすでに存在せず、その後については「過去10年分には不適切な処理の実態や疑わしいものは見当たらなかった」としていた。

 しかし、今年に入っての第三者委の調査では、02年以前のデータが見つかったうえに02年以降も品種偽装が行われていたことが判明。当時の社内調査の際、事実の隠蔽(いんぺい)があった可能性をあぶり出した。

 02年は、同社のグループ会社だった「雪印食品」(後に解散)が国のBSE(牛海綿状脳症)対策制度を悪用し、輸入牛肉を「国産」と偽って助成金を詐取した事件が発覚した年。それ以降は不祥事は起きていないという「ストーリー」に沿って社内調査の報告書がつくられたと、格付け委員の一人はみる。

 14年の報告書作成時に専務(第三者委報告書では「A専務」と記述)だった赤石元社長が当時、「新聞記者からの取材を受けた場合、腹を決めて事実を正直に言う」というメールを部下に送っていたことも、今回の第三者委の調査で明らかになった。赤石氏は98年以降、品種の表示を担当する種苗課の課長を務めていた。今回の第三者委の聴取に対して赤石氏は、品種偽装を部下に指示したり、自ら実行したりしていたことを認めた。

 こうした事実を次々と明らかにした今回の報告書に、格付け委では「ファクトに対する肉薄度。迫力が違う」「真犯人を見つけたかのようだ」などと評価する声が相次いだ。

 それでも多くの委員の評価が2番目の「B」にとどまったのは、親会社の責任に対する「突っ込み不足」が減点材料になったためだ。

 14年の社内調査では、親会社の雪印メグミルクの監査役が調査委員長を務めていた。しかし今回の第三者委の報告書では、雪印メグミルクの責任の所在があいまいで、内部統制の機能不全に触れる記述も少なかった。

     ◇

 神戸製鋼や三菱マテリアルなど名だたる大企業でデータ改ざんなどの不正が相次ぎ、不祥事が明るみに出るたびに企業は第三者委など外部の調査に事実解明を委ねるパターンが繰り返されてきた。しかし、多くの調査報告書について格付け委は「調査があいまい」「事実の羅列にすぎない」などとして厳しい評価を下している。

 久保利委員長は「雪印種苗の報告書と比べると、昨年、不祥事があった5社(神鋼、日産、東レ、三菱マテリアル、スバル)の報告書には『お茶濁し感』がある。これらの企業に『とりあえず第三者委に調査を丸投げすればマスコミは黙る』という発想があっただろうことは否定できない」と批判する。

 企業にとって「不都合な真実」を第三者の目で徹底的にあぶり出そうとした雪印種苗のケースは、今後の企業の不祥事対応の一つのモデルになる可能性がある。