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 トヨタ自動車が、未来のクルマに必要な先端技術やアイデアの確保をめざし、ベンチャー企業との提携を加速させている。自前にこだわるだけでは急速に力を伸ばす巨大IT企業などに後れをとってしまうという危機感が背景にある。

 「私たちと一緒に自動車の未来をつくりませんか? ご賛同いただける方、『この指とーまれ!』」

 6月下旬の東京お台場。ベンチャー経営者ら200人ほどで埋まった会場で、トヨタの豊田章男社長が声を響かせた。インターネットとつながるコネクテッドカーをお披露目する舞台で、未来のクルマづくりに挑む仲間を募ったのだ。

 技術開発や生産を自社で手がける「自前主義」を基本にしてきたトヨタだが、近年は独自技術を持つベンチャーに出資したり、アイデアを募ったりする動きが活発化している。

 その一例が、自動運転に必要不可欠とされるAI(人工知能)の分野だ。

 トヨタは5月、データ分析会社アルベルト(東京)に4億円を出資し、6%の株式を得た。約100人のデータサイエンティストを抱え、顧客が必要とする知見を、大量のデータ解析で引き出せるのが強み。アルベルトの安達章浩執行役員は「画像解析でも異常検知でも、他社が1年かかる課題を3分の1の時間で解決できる」と胸をはる。

 トヨタはこれまでも速度やブレーキに関する情報を走行中の車から通信で集め、渋滞状況の把握などに役立ててきたが、「我々にデータ収集の力はあるが、分析に必要な人材が足りない」と平野洋之・第2自動運転技術開発室長。データ分析に優れるアルベルトの協力を得て、AI開発を加速させる狙いだ。

 販売店網やコネクテッドカーを介した新サービスのアイデアを企業や個人から募る「トヨタネクスト」と呼ぶ試みも16年12月に始めた。昨夏は500超のアイデアから、ネットビジネスが得意な「エイチーム」(名古屋市)など5社を第1弾の協業先に選んだ。

 トヨタはこれまで自動車製造が事業の柱だったため、急速に需要が高まるAI開発やネットビジネスに通じた人材を社内だけで十分に確保するのは難しい。ベンチャーと急接近するのは、必要な人材や技術をすばやく取り込むためだ。

 豊田社長がライバルと名指しする米国のグーグルやアマゾンなどのIT企業の場合、「自社にない技術は手っ取り早くM&A(企業合併・買収)で獲得する」という姿勢が鮮明。人材獲得目的のM&Aは「アクハイヤー」と呼ばれ、成長の力になっている。豊田社長は「M&Aも含めあらゆる選択肢を検討する」と述べ、脱自前主義を進める考えを強調する。

 自動運転をはじめとする新技術の開発競争はIT企業を含めて激化。グーグル子会社は年内にも無人運転タクシーを米国で走らせる計画で、ゼネラル・モーターズも19年に無人運転車の量販を始める予定。中国の検索サービス大手「百度」も自社のAIを使った自動運転システム開発を進め、搭載車両の公道実験に乗り出す。

 自動車業界は、異業種も参戦して主導権を奪い合う「100年に1度」(豊田社長)の変革期に入った。環境の激変に危機感を抱くトヨタにとっては、ベンチャーとの提携戦略が重要なカギを握りそうだ。(山本知弘)

トヨタはベンチャー企業に相次ぎ出資している

※①企業名②出資額③特徴

◆2017年8月

①プリファード・ネットワークス

②105億円

③AI技術の共同研究・開発相手。15年にも10億円を出資済み

◆17年9月

①パークシャテクノロジー

②9・2億円

③画像処理技術に強み

◆18年2月

①ジャパンタクシー

②75億円

③スマートフォンのアプリでタクシーを配車する国内大手

◆18年5月

①アルベルト

②4億円

③ビッグデータ分析と人材育成に強み

◆18年6月

①グラブ

②1100億円

③東南アジアの配車サービス最大手