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 電力会社にとって、今年も「やっかい」なシーズンを終えようとしている。毎年2~7月は、電柱に作られたカラスの巣の撤去に追われるからだ。停電を引き起こす恐れがあるため、中部電力は昨年、名古屋支店だけで年間6千個あまりの巣を取り除いた。多い時には1日10回以上も「出動」する撤去現場に同行した。

 6月上旬の名古屋市熱田区の住宅街。高さ約13メートルの電柱を見上げると、先端には直径約50センチの巣があった。枝や電線くず、ビニールひもを使い、工夫を凝らしたつくりになっていた。

 作業員が高所作業車に乗り、巣にカラスがいないことを確認し、手袋をはめて巣を電柱からはがしとった。この間、わずか1分ほど。親ガラスに気づかれると、つつかれたり、追いかけられたりするため、作業は素早くするのが鉄則だ。

 営巣シーズンである2~7月は毎年、各地でカラスの巣による停電が相次ぐ。名古屋市と近隣35市町村を管轄する中部電力名古屋支社によると、管内では昨年2~6月にあった43件の停電のうち、3割弱の12件がカラスの巣が原因と判明。同支社が昨季撤去した巣は6208個にのぼる。

 中部電力によると、巣に使われた材料が電線に触れた状態で雨が降ると、漏電が起きて停電することがあるという。4月19日には、カラスの巣が原因で名古屋市東部を中心に約3万1千戸が停電した。

 ただ、停電に直結しそうにない場所の巣は、すぐに取り除かない。同社熱田営業所の山口健一・配電課司令長は「すべて撤去して、停電しやすい場所につくられても困る」という。あえて残した巣には注意を呼びかける看板をつけ、子ガラスが巣立つのを待ってから取り除くことにしている。

 カラスの生態に詳しい宇都宮大の杉田昭栄特命教授(動物形態学)によると、電力会社は電線に突起物を付けるなどの対策をしているが「カラスは適応能力が高く、すぐに慣れてしまう。有効な対抗手段はなく、共存していくしかない」と話す。(山本知佳)