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 沖縄県沖縄市で2008年に起きた米海兵隊員の男2人によるタクシー強盗致傷事件で、被害に遭った運転手の家族が米兵に損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、那覇地裁沖縄支部であった。後藤誠裁判長は請求をほぼ認め、米兵2人に遅延損害金を含む計約2640万円の支払いを命じた。

 判決によると、08年1月、乗客の米兵2人が運転手の宇良(うら)宗一さんの顔などを酒瓶や拳で殴って重傷を負わせ、運賃2780円を踏み倒した。宇良さんはけがの回復後も心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不眠症の後遺障害が残って退職し、12年に63歳で病死した。

 米兵らは日本の刑事裁判で実刑判決を受けて服役したが、その後の所在はわからず、民事上の補償は事件から10年が過ぎた今も支払われていない。

 日米地位協定は、米兵の公務外の事件事故で本人に支払い能力がない場合、米政府が補償すると定める。米政府が示す額が実際の損害と開きがある場合、1996年に差額を日本政府が代わりに支払う「日米特別行動委員会(SACO)見舞金」が設けられた。

 家族は09年から沖縄防衛局を通じて米側に補償を求め続けたが、昨年秋に示された額は146万円だった。さらに加害者や米政府への請求を永久に放棄することも支払い条件とされた。

 家族は昨年12月、SACO見舞金の請求に向け、損害額を確定させようと提訴した。判決確定後、防衛局に対し、米側が示した額の見直しと、差額の支払いを求めるという。

 法廷で判決を聞いた宇良さんの長男宗之さん(33)は「父は事件後、ずっと苦しめられ続けた。どうして事件から10年もかかるのか、なぜ家族はつらい思いをしないといけないのか。そういう気持ちが強い」と話した。(伊藤宏樹)