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 12日開幕した第100回全国高校野球選手権記念東兵庫大会で、女子主将の近江瑞月(みずき)さん(3年)が率いる尼崎工(兵庫県尼崎市)が12日、川西北陵(川西市)との初戦に挑んだ。全国的にも珍しい主将だが、近江さんは「女子だからという理由ではなく、結果で注目される存在になりたい」と話す。

 尼崎工のグラウンドに、走り込みを続ける選手たちを鼓舞する声が響き渡る。「ダッシュ! 走り切れ! 1番狙え!」とひときわ力強い声を出す近江さん。唯一の女子部員でもある。

 もともとはマネジャー。昨年7月の新チーム結成時に主将に指名された。練習時はメニューを指示し、グラウンドに立って選手の取り組み方に目を光らせる。

 昔はサッカーが好きだった。強豪校への進学を目指す中、中1の冬に左足首を骨折。半年後、練習に復帰したが、足が思うように動かず、練習から遠のいた。卒業後の進路を決める際に、オープンスクールで見学した尼崎工で野球部の力強いかけ声や鋭い打球音に圧倒されたことが心に浮かんだ。「自分もあのグラウンドへ」と尼崎工に進んだ。

 昨夏の兵庫大会3回戦で敗れた直後、球場から高校に戻る車中で舟越明斗監督(42)から主将指名を受けた。「私がキャプテン?」と動揺し、言葉が出なかった。だが、近江さんは「やるからには、勝つチームにするしかない」と決心した。

 内野手の森岡善成君(3年)によると、「正直、『なんで』という声も最初はあった」と話す。近江さんが練習中、発破をかけても「あいつにこのしんどさはわからんやろ」と反発する部員も多かったという。

 しかし、誰よりも早くグラウンドに来る姿や、ミーティングで「このまま練習してたら勝てへんぞ」と厳しい意見を言う姿に選手たちの心は変わっていった。

 舟越監督は「おとなしい選手が多い中、チームの火付け役になってほしかった。勝ちたいという思いを言葉にできる部員が主将になるのは、自然なことだ」と話す。近江さんは「女子主将」という点を強調されることには違和感があるという。「勝ちたいという気持ちの強さは同じ。『女子なのに』と言われるのはおかしいと思う」。

 「チームのために嫌われることを恐れない近江を見て『俺らも負けてられへん』と思うようになった」と森岡君。選手たちは徐々に近江主将のもとで団結していった。

 近江さんはこの日朝、ミーティングで「力を抜いて、しっかり打ち返そう!」と選手を元気づけ、記録員としてベンチに入った。「どんな展開になっても、笑顔で選手を支えたい」(山崎毅朗)