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社会学者・大澤真幸さん(寄稿)

 オウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こしたとき、私はこれを「虚構の時代の果て」の出来事だと論じた。私の考えでは、日本の戦後史は、理想の時代から虚構の時代へと変化してきた。理想の時代とは、社会全体に関してであれ、人生に関してであれ、何が理想の状態であるかのイメージが明確で(「平和と民主主義」「マイホーム」等)、コンセンサスがある段階である。理想の時代は1970年代初頭で終わる。理想のもつ説得力が失われ、理想が占めていた場所を、多くの私的な虚構(アニメ、ゲーム等)が占め、人々がそれらに耽溺(たんでき)する時代がやってきた。

 オウムは、虚構の時代が極限に来ていたことの指標である。彼らは虚構を、彼らの「革命」を駆り立てる理想として活用したからだ。理想と虚構はともに非現実だが、違いは、前者はやがて現実化すると見なされなくてはならない点にある。理想の枯渇は耐え難い。オウムは虚構をそのまま理想とし、その実現を目指したのだ。オウム信者がアニメ的世界を生きているように見える、とはこのことを指している。

 だが特殊なタイプの虚構でなけ…

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