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医の手帳・たばこ(2)

 火をつけない「加熱式たばこ」のシェアが拡大しています。「有害物質9割削減」の宣伝効果は大きく、安心、受動喫煙の心配なしというイメージが広まりました。しかし、これは大きな誤解です。

 まず喫煙者が吸い込むエアロゾルは、たばこ葉加工物の加熱により発生したニコチンや各種の発がん物質など、様々な有害物質を含みます。単なる水蒸気ではありません。「9割削減」も宣伝パンフレットをよく見ると、数多くの有害物質のうち、「九つ」だけの測定結果であることが小さく書かれています。

 また喫煙者が吸い込んだエアロゾルの3分の1は、そのまま吐き出されます(呼出煙)。呼出煙は見えにくく、においもほとんどありません。受動喫煙なしという誤認識により、加熱式ならOKという飲食店の出現や、家庭の喫煙場所の屋内回帰が起きています。気付かないうちに発がん物質を含むエアロゾルにさらされる場所が増えています。私はこの状況を「新興再興受動喫煙・ステルス型」と名付け、警鐘を鳴らしています。

 さて禁煙は長い間、強い意思の力が必要で、つらく、苦しいものと思われてきました。しかし、今では禁煙困難の正体が、依存性物質であるニコチンによる身体的依存と、記憶や日常生活とのリンクによる心理的依存のダブル依存であることがわかっています。

 ニコチン切れのつらさを抑える禁煙補助剤も開発されています。補助剤を使うとずっと楽に禁煙でき、成功率も高いのです。日本では2006年から、禁煙治療が保険適用となりました。禁煙治療は補助剤だけでなく、心理的依存への対処も行います。ダブル依存に意思の力だけで打ち勝つのは大変です。医療を応援団として上手に活用しましょう。

<アピタル:医の手帳>http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学医学部保健学科 関奈緒教授)