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 「水があふれるのではないか」「このままでは水が迫ってくる。助けて」

 岡山県の倉敷市消防局によると、6日午後11時半ごろから、こうした119番通報が増え始めた。7日午前0時すぎには、倉敷市真備(まび)町からの通報がひっきりなしに入り、混乱した。

 この直前の6日夜、真備町の男性(82)は、懐中電灯を手に寝床から外へ出た。買い物を済ませて30分ほどして戻ると、自宅沿いを流れる末政川の水位が急上昇している。長雨に危険を感じた。一緒に暮らす息子夫婦と孫2人に声をかけ、着の身着のまま近くの小学校へ避難。夜通し、「ドドドド」と屋根をたたく雨の音が響いていた。

 何が起きていたのか。

 倉敷市は市の東西を流れる1級河川の小田川の水位が急上昇したため、6日午後10時に真備町地区に避難勧告を出した。同11時45分に小田川の南側の住民に避難指示。通報が増え始めるのは、このころだ。

 そして7日午前1時半。

 市によると、小田川に流れ込む高馬川で堤防が崩れ、その崩れた部分が広がり、小田川の堤防が崩れたことが、今回の大規模な冠水を引き起こした。そして水位は、さらに上がっていく。

 7日午前8時より少し前、同市真備町の島口晶一さん(66)は、1階リビングの窓から外を見るとすでに冠水し、水が西から東へと、じわじわと広がっていくのが見えた。

 「これは大変だ」

 家財道具を1階から2階へあげているうちに水は家の中へ。冷蔵庫が倒れ、畳が水で浮いた。午後2時半くらいには、2階まで水が迫ってきた。水上バイクに乗って救助に来た若者に助けられたという。

 男性(70)は、午前9時半ごろに家の裏の水路の水が増えていると思った。昼前ごろ庭に水が入り始めたかと思うと、数分で自分のひざが水につかるまでに。ボートで救出されるまで、妻と2階で過ごした。40代女性は、救出されるまで自宅2階で両親とともに過ごした。「ベランダで赤い服や白いワイシャツを大きく振って助けを求めた。死ぬかと思った」

 7日午前の時点で、屋根の上にのぼって避難する人や、濁流の中で木にしがみついて助けを求める人が続出した。真備町地区の人口は約2万3千人。市によると、同午後3時までに約270人を救出。現時点で行方不明者は1人だが、水は引いておらず、被害の全容は明らかになっていない。

 7日夜時点でも自宅に取り残されている人がいるほか、まび記念病院で多数の入院患者や医療関係者が取り残されているという情報もあり、市と消防は、情報の確認やボートによる救出活動に追われていた。

 地区内の小学校などには、約5千人が身を寄せた。近くの小学校に避難した会社員の女性(29)は、「今は車のテレビなどで情報を収集しているが、見たことのない光景が映っていてびっくりしている。どうしようもない状況だけど、周りの人と助け合ってがんばらないと」と話した。