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 岐阜県関市上之保地区で8日未明、長良川支流の津保川が氾濫(はんらん)し、民家を濁流が襲った。これまでも川が増水することはあったが、今回は、かつてないほどの速度で水位が上昇し、水が堤防を越えたという。住民らは暗闇の中を避難するなど困難な状況に追い込まれた。

 地区の住宅では8日朝、水浸しの家電や家具が泥が残る道路へ次々と運び出された。駆けつけた市の職員や親類、友人らが住民の片付けを手伝った。午後からは日差しが照りつけ、蒸し暑くなった。眠れない夜を過ごした住民らの表情に、疲れがにじんだ。

 高木しのぶさん(40)は、氾濫(はんらん)前、自宅裏の津保川を見ていた。水位の上昇を「いつものこと」と気にしなかったが、1時間ごとに1メートルほど上昇する水位に不安を覚え、避難準備を始めたところ、玄関から水が入ってきた。

 「先に逃げて!」

 午前1時半ごろ、子ども2人と祖母を避難させ、2階の寝室から荷物を取って玄関に戻った。扉を開けると濁流が押し寄せてきた。わずか数分で水は腰の高さに迫り、泥水をかき分けて逃げた。

 避難所で夜明けを待って自宅に戻ると、川側の壁は崩壊し、1階には流木や泥が流れ込んでいた。食器棚は4軒隣の民家前で見つかった。気づけば、ふすまの上に泥の線が付いていた。「あのまま逃げなかったら、生きていなかった」

 明日以降も片付けを続ける。子どもたちに「家を建て直すの、捨てるの」と尋ねられ、「まだ考えられない」とため息をついた。

 上之保から見て津保川の下流にあたる関市下之保地区。「コンテナ流れてきました、怖い」。地区に住む女性(22)は8日朝、ツイッターでつぶやいた。午前2時ごろに道路脇の用水路があふれ、午前4時には、自宅近くを流れる津保川と道路が一体化するように住宅地に水が入ってきた。その様子を動画で撮影した。

 「ただただショックでした。地域の方々の安否が心配で仕方なかった」と女性は振り返る。この規模の水害は初めてのことだという。女性の自宅は物置が1メートルほど浸水し、近所も床上浸水するなどして町中が土砂にまみれたという。

 「すてきな田舎町なので悲しい。早くきれいにしたい」と女性は話した。(室田賢、斉藤佑介)