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 日本各地に甚大な被害をもたらした豪雨。中でも記録的な降水量を記録したのが岐阜県郡上市ひるがのだ。降り始めからの総雨量は1058ミリに達したが、人的被害はなかった。雨が小康状態に入った8日午後、標高約900メートルの高原に記者が入った。

 高速道路が通行止めのため、県道と国道を何度も迂(う)回した。土砂が崩れたような痕もあったが、多くがすでに片付けられていた。

 ひるがの高原にあるウシやヤギなどが暮らすテーマパーク・牧歌の里。牧野靖史営業課長は「雨はすごかったけど、動物たちはみんな元気です」。雨の間は屋根がある牧舎に避難していたという。飼育員の福田美砂紀さん(24)は「雷にヒツジが驚いていたくらいでみんな落ち着いていた。アルパカは寝てました」。

 近くに住む女性(65)は「『バケツをひっくり返した』じゃ足りない。お風呂の浴槽を何個もいっぺんにひっくり返したような雨だった」というが、家に被害はなかったという。

 ひるがの高原には、大日ケ岳から流れてきた水が、太平洋側と日本海側に分かれる「分水嶺(ぶんすいれい)」がある。激流で分水嶺が分からなくなるような被害が出ているのではないかと心配したが、1千ミリ超の雨が降り注いだ場所とは思えないほど、驚くほど緩やかな水が流れていた。

 分水嶺の近くで喫茶店を営む直井信一さん(69)は「ニュースの雨量情報で『ひるがの』が何回も出たので、よそに住んでいる人から心配する電話が何本も来た」と苦笑する。「ここは一番てっぺんだから全部下に流れていく。むしろ下流に住んでいる人たちの被害が心配」と思いやった。

 岐阜大学流域圏科学研究センターの原田守啓准教授(河川工学)は、ひるがので雨量に比べて被害が相対的に小さかった理由について「もともと雨が多い地域なので、雨に降られ慣れていない地域と比べると不安定に堆積(たいせき)している土砂が少ない」と指摘する。

 また、地質的にも土砂災害が起こりにくいという。原田准教授は「郡上周辺の地質は濃飛流紋岩という固くて丈夫な火成岩で、山自体が堅固な岩盤でできているので大規模な崩落が起こりにくい」と指摘している。(山野拓郎、上田潤)