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 金融庁の森信親長官が17日付で退任する。3年間の任期の最後に同庁の改革案をまとめ、「国のため」を意識しようと職員に呼びかけた。その狙いを森氏に聞いた。

 ――金融行政はアベノミクスの要でした。3年間の達成度は。

 「日本は資産大国なのに企業はバランスシートを縮めることを考え、(投資が減って)お金の行き場がなくなってきたことが課題だった。手数料収入を増やそうとしてきた金融機関に対し、これからは顧客をもうけさせたかどうかを評価の指標にしましょうと呼びかけてきたことで、ずいぶん金融業も変わったはず。コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の見直しも進めた。だが、世の中の動きが速くて課題はむしろ増えてしまった」

――なぜいま「国のため」の再確認が必要なのですか。

 「国に尽くしたい意識が強くて公務員になったはずだが、だんだん国より組織の論理、『省益』を考えるようになる。それが国益につながらない場合もある。正しいと思ってきたことが正しくなくなったのに続けてしまう癖もある。例えば財政が厳しい中で、国益を考えるなら同じ目的を少ない経費でやるべきだが、どの役所も予算を多く取ったかどうかでいまだに評価が決まる」

 「新たな課題に直面した際も組織のしがらみから考えがち。常に国益を念頭に置いて行政は変わっていくべきだし、変えることを評価できる組織、そのための人材育成を何より大切にできる組織であってほしい」

 ――「自前主義」を見直して民間の意見を早くから聞く方針も掲げています。

 「例えば、フィンテックが金融業を加速度的に変えているが、最先端の動きを最もよく理解しているのは民間企業の人たちだ。民間の事業を監督する立場なのだから、動きに遅れないためには民間の意見を聞くことが不可欠になっている。職員も民間出身者を増やし、スペシャリストがそろう組織を目指している」

 ――年功序列も見直していくと。できますか。

 「自己評価は高いのに、上司からも部下からも評価されない課長がいる。そういう人は適齢期でも課長にしてはいけなかった。大切なのは年次ではなくスキル。こう考えると、みんなの評価は自然に一致していく。昇進に人気は必要ないが人格は求められていく」

 ――文書改ざんやセクハラなど公務員倫理が問われる事態が続いています。

 「組織の見直しは以前から議論してきた。一連の出来事があったから考えたわけではない」(聞き手・山口博敬)

森氏がまとめた金融庁改革案(骨子)

・同じ仕事を繰り返すことに安住する組織では金融行政をまっとうできない

・内部だけの議論は現状肯定的対応にとどまる恐れがある。遠慮した議論しかできない組織は時代遅れな対応を繰り返し、存在意義を失う。霞が関の中だけで考えていては決して良い施策は出てこない

・同じバックグラウンドを持つ人間ばかりからなる組織では新しい取り組みは生まれない

・国家公務員として「国民のため、国益のため」を忘れてはならない

・将来のリーダー候補にはより困難な体験や修羅場をくぐらせる。リーダーに必要な能力を備えた者は年次や採用区分にかかわらず登用する。働きぶりを重視した登用を徹底する

・前向きな失敗は、良しとする

・課長クラスには現場の責任者として、局長クラスには金融庁の顔としての「人格」を求める