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戸田和幸の目(元日本代表)

 6月末から10日ほど、ワールドカップ(W杯)ロシア大会を訪れ、テレビ中継での解説を含め、5試合を観戦することが出来た。

 戦術的なレベルは欧州チャンピオンズリーグの方が高いが、W杯は4年に1度しかない国を代表して戦う特別な舞台。一つ一つの試合に懸ける選手たちの思いの強さは桁違いだった。

 特徴的だったのは各チームのカラーがはっきりしていたこと。例えば、イングランドは堅いサッカーを展開するが、セットプレーに力を入れ、安全かつ効率的に勝ち上がってきた。ベルギーは攻撃と守備で別のシステムを使い分け、ブラジルを破り1986年大会以来のベスト4に進出した。

 ベルギーを筆頭に多くのチームが試合中に選手の配置やシステムを変え、試合の主導権を握るために様々な駆け引きを行っていた。それこそが現代サッカーのトレンドで、サッカーは不確定要素を出来る限り排除するために様々な戦術を駆使するものへと変貌(へんぼう)し、以前に増してより複雑化している。

 W杯は1カ月間の短期決戦となるため、フランスのように大会中に伸びるチームは強い。上位に残ったチームはしっかりとした守備を基盤としてもち、攻撃を仕掛ける共通点がある。

 サッカーの複雑化はすごいスピードで進んでいる。そしてそうした新しい時代のサッカーを知る喜びや楽しさがある。11人が一つの生命体のように動き、選手は常に思考を止めずにプレーしている。解説者としてはより多くの人にサッカーに興味を持ってもらうために、サッカーの本質、試合で行われていることを可能な限りわかりやすく伝えていくことが大切だと、改めてロシアの地で認識した。

 モスクワやニジニノブゴロドなどの4地域に足を運んだが、スタジアムはどれも近代的で造形的で美しいものだった。

 観客席は角度があって見やすく、いわゆる日本の「競技場」とは何もかもが違った。サポーターで印象的だったのは、南米だ。コロンビアやアルゼンチンサポーターの大声援には心動かされるものがあり、彼らもまた4年もの月日をこの大会のために過ごしてきたのだと、これがW杯なのだということを強く感じさせられることになった。(元日本代表)

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