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 スーパースターが生きにくい時代――。

 決勝トーナメントが進むにつれて、その実感が深まっている。

 成熟したチームが好試合を演出する一方で、ポルトガルのFWロナルド、アルゼンチンのFWメッシ、そして、ブラジルのFWネイマールが、次々とロシアの地を去っていった。

 傑出した個の強みは、グループ戦術を高めた集団によって消されてしまう。この流れは今大会でさらに顕著になった。

 ブラジルがベルギーに敗れた6日の準々決勝で、ネイマールのドリブルは空転した。周囲との連係を分断され、ゴールに近づけば、スペースを狭く限定された上、2人、3人と囲まれてボールを絡め取られた。

 ごり押しのドリブルは、ベルギーの思うつぼだった。ボールを失って逆襲されるリスクの芽となった。

 メッシは、アルゼンチンが準優勝した前回大会からさらに孤立した。

 1次リーグで完敗したクロアチアと、決勝トーナメント1回戦で負けたフランスに共通したのはコンパクトな陣形。常にプレッシャーを受けた状態のメッシは前を向けず、ボールを後方に下げる場面が多かった。

 ポルトガルのロナルドにも質の高い相棒が近くにいれば、というシーンが続いた。彼らのストレスが大きかったことは容易に想像できる。

 技術をゆったりと披露する時間が選手に与えられていたのは、1980年代が最後だろう。

 選手がボールを持てば、ピッチのあちこちで一騎打ちが見られた。1対1の攻防でやるか、やられるか。攻める側も守る側も、互いの技術を試し合うようなおおらかさがあった。

 ブラジルのペレ、オランダのクライフ、アルゼンチンのマラドーナら名手の足技、身のこなしが見る者を引きつけたのは、昔話のようだ。

 現代サッカーでは、個人の技術だけで組織に対抗するには限界が見えている。この先、組織的な守備を打ち破るには、コンビネーションをより高めるなど攻撃も組織化が必要になっていくだろう。

 4強に残ったチームを見渡しても、驚きはない。突出したスターがいなくても、穴のないメンバーをそろえて、チームとして磨き込めば十分に戦えることを示した。それが、この競技のだいご味でもある。

 選手はより均質化している。守備も攻撃もできて、どんな試合や相手にも応じられる能力が求められる時代だ。強烈な個性はますます生まれにくくなった。

 それでも、歴史はきっと繰り返される。次は組織を鮮やかに打ち破る、スターが出現する番だ。(潮智史

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