[PR]

Round20 近くて遠い国 中国とのつきあい方 「庄説」

 僕は正直に言って中国には良い思い出がない。

 もう中国ではロケをしません!と撮影中に言ってしまったぐらい振り回された。

 もちろん本音混じりの冗談として言ったのだが。結果、ディレクターさんの編集でそれも込みで面白くなったのも事実だから、振り回されたことが良かったのかと思ったりして、何とも言えないのが正直なところだ。

 日本人が中国に親しみを感じるか? 論説委員の古谷さんから頂いたデータを見て、驚きもあったが、変にうなずいてしまう自分がいた。

 現在は日本から中国へ、仕事で行く人はいるが、旅行、観光で行く人が少なくなっている状況だ。しかし80年代は米国よりも中国に親しみを感じている日本人が多かったのだ。これには少し驚いた。

 パンダブームも手伝って、親しみを感じた人が多かったようだ。

 確かに日本中が中国から来たパンダに熱中していたし、僕もその中の一人だった。

 日本人から見る中国への好感度が下がっているにもかかわらず、現在、年間730万人の中国の方が日本に来てくれている。これは素直にうれしいことだ。

 しかし問題も多少ある。

 僕が感じるのは中国の方のマナーの悪さだ。

 行列には横入りするし、トイレの使用も雑だ。そういう印象は僕だけでは無いはずだが、このことを古谷さんに伝えると、中国人の中国での育ち方、そして国の体制などの話が聞けた。

 政府を批判するようなことを、それが限定された場所での発言だとしても、次の日にはそのことが知られているという緊張感の中で生きていると、信じるものが失われてモラルもなかなか育ちにくい環境になるのではないかと。しかも密告すると点数があがるという。実に怖い話だ。

 中国のAI(人工知能)はSNSの監視ができる段階らしい。日本を訪れた中国人によるこんな話がある。

 神宮球場で行われたヤクルト対広島の試合で写真や動画を撮り、SNSにアップした。広島の応援席の画像は届いたが、ヤクルトの応援席の画像は一切届かない。ヤクルトの応援は点数が入るとビニール傘を広げて応援する。この傘が問題だったというのだ。

 香港では、傘をシンボルに使った民主化を求める運動があった。そのため、傘を広げて応援する画像をAIが違法とみなしたのだという。

 日本では考えられないことも、普通に中国では行われているのだ。

 身近な話でなるほどと感心したのは、古谷さんが中国から日本に帰ってきた時の話だった。自然と横入りしてしまう体になっていて困ったというのだ。僕はこの話がとても興味深かった。日本に来た中国の方で横入りをしている人は、決して故意的にではなくて、自然にしてしまっているのかも、と思った。

 ズルをしてやろうという、日本人が考える横入りの概念ではなく、ただ隙があったら入るだけという考え方なんだろうと。僕は少し楽になった。

 だって絶対並ばなきゃいけないと育った日本人と、並ばなくて良い、隙があったら入りなさいと育った中国人では真逆だから。そういえばニュースでも、壁と壁の隙間におじさんが入って抜け出せないっていう中国の映像を見たことがある。そのせいなのかもしれない。

 今後、中国経済は米国を超して世界一になるんだろうか。その時日本は中国と米国とどう向き合っていくのだろうか。

 現在、これだけ中国の方が日本に遊びに来てくれて、満足度も高い。一方で、中国にずっといて歴史的背景を教え込まれている人は、日本のイメージがずっと悪いままらしい。実際に日本に来た人に、帰ってから日本のよいところを話してもらう。そうなってもらうようにすることも大切にしたい。今以上に親日の方を増やすことになるはずだ。

 さらに、僕たち日本人も積極的に中国へ訪れることを考えていきたい。

 そして中国の善い所を伝えていくべきだ。

 実際に中国で見るパンダはやはりよかった。柵も低いし、ガラスも無い。パンダの数も多いのでいろんなパンダが鑑賞できる。人慣れしているパンダもいて、近寄って愛敬を振りまいてくれるパンダもいた。

 日本のルーツを探るのも良いだろう。漢字のルーツや歴史のルーツ。お寺の建造物を見るだけで僕なんかは興奮してしまう。

 中国にしかない独特な建物や文化もある。経済成長している真っただ中の街を見て回るのも勉強になる。 四川の麻婆豆腐はやっぱりどれも絶品だった。

 僕たちが出来ることは日本に来てくれた中国人と触れ合い、そして中国へ行った時にも積極的に触れ合って、学校で教えられた歴史だけでなく、実際に現地で感じたことをみんなに伝えていくことではないだろうか。

 そうすれば今よりも良い関係が築けるのではないだろうか。

 だってこれからもずっと僕たちはお隣さん同士なのだから。(庄司智春)

【論説委員講評】続きは中国の人たちも一緒に

 庄司智春さんとお会いしたのは、劇場の舞台裏にブースで仕切られた小さな控室。ご自身の舞台での出番が終わり、次の出番までの空き時間を使った、ちょっと慌ただしい感じの対談だった。

 正直言って、中国の話というのは、今の日本で愉快な話でもないし、楽しい話題でもないと思う。初対面の日本人同士で、いったいどんな話をすればいいのか。庄司さんの貴重な時間を無駄にしてはいけないと思いつつ、悩みながら話を始めると、私だけでなく、庄司さんもやりにくそうに見えた。

 それでも庄司さん、仕事で中国を訪れたときに出会った人々の話などを面白おかしく語ってくれた。さすが話のプロだなと感心。引っ越しができない隣国同士の関係を、いかによくしていけばいいのか。真剣になってアイデアを何とかひねり出そうとする姿勢にも、率直に言って大いに好感を感じました。はい。

 一方、対談を朝日デジタルで読んだ中国の友人からは、庄司さんの言葉は日本における中国のイメージをすごく正直に代表していると感じた、との感想が届いた。友人はそのうえで、中国の印象をよくしたいと改めて痛感した、庄司さんの対中国観を変えたい、とも言っていた。

 こういう感想って、重要だと思う。私たちが普段書く新聞記事では届かないところに何かが届き、反響している感じだ。

 どうですか、庄司さん。もしよろしければ、次回は是非、中国の人たちも一緒に話の続きをしませんか。おいしい中華料理を食べながらでもいいですね。(朝日新聞論説委員・古谷浩一)

こんなニュースも